先月、大塚国際美術館の『ダ・ヴィンチ・コード』刊行20年記念イベント「翻訳者・越前敏弥が語るラングドン・シリーズ5作」に行ってきました。先生のお話も面白いし、「ラングドン・シリーズ」に登場する作品が数多く鑑賞できる美術館も見事でした。

 

『オリジン』のテーマである、ポール・ゴーギャン「われわれは何処から来たのか? われわれは何者であるのか? われわれは何処へ行かんとしているのか?」の実物大陶板画も展示してあり、その大きさは圧巻です。間近で見ることができるし、触ることもできます。

 

越前敏弥先生には、「ライフサイエンスの翻訳をやっているなら『オリジン』が面白いのでは」とすすめられ、早速読みました(ほんとうは、事前に読んでおきたかったのですが、この本は間に合わなかった……)。

 

 

 

 

そして、先生のおっしゃるとおり、見事にはまりました!

 

私にとって何が一番面白いのかというと、進化生物学が絡めてあるところなのです。「生命誕生とダーウィン進化(科学)vs 天地創造、アダムとイブの誕生(宗教)」が根底にあります。

 

「人間がサルから進化したなどとはけしからん!」とダーウィンがキリスト教の聖職者から非難されたアレです。

 

「我々はどこから来て、どこへ行くのか」という人類最大の謎を、コンピュータ科学者・未来学者のカーシュが答えを出したという話で始まります。カーシュは科学の未来を的中させた予言者としても評価されています。量子コンピュータを用いて導き出した答えとは?

 

「生成AI」が話題になった今年、「人類はどこに向かうのだろう?」と思いを巡らせていた矢先だったので、カーシュがたどりついた答えが知りたい一心で、一気読みしてしまいました。近い将来あり得るかも知れない、なかなか興味深い答えでした。

 

ラングトンが彼のつくった人工知能(AI)ウインストンの助けを借りて謎を解き明かしていくというストーリーですが、AIの怖さも感じました。

 

人工知能や量子力学など最先端の科学だけでなく、iPhoneやウーバーやSNS、フェイクニュースなどが出てくる一方で、ラングドンシリーズの特徴である美術や建築もたくさん出てくるところが面白い。スペインを旅行しているような気分になり、グッゲンハイム美術館ガウディ設計の<カサミラ>サグラダ・ファミリアなどの建築は、実物を見たくなります。

 

事件が起こるまでのウンチクがとても長くてじらされるのですが、私は最先端の科学と神話の両方が好きなのでウンチクも面白かったです。


日本では、生命の起源や進化は当たり前の科学として習うのでそれを批判したり、逆にわざわざ「無神論者」と名乗って宗教を批判したりということは日本人にとっては不思議なことですよね。

 

 

私の訳書『ウイルスと共生する世界 新型コロナアウトブレイクに隠された生命の事実』でも、ダーウィンの進化論が出てきます。この本の後半では、ウイルスとは何か? ウイルスは生命なのか? ウイルスはどこからきたのか? という疑問に対する答えが展開されます。そして、自然選択だけでは、そこまで急激な進化は起こらず、ウイルスが生物の進化に貢献したのだよという話もでてきます。最後は、新たな生物学の分類を提唱します。こちらは、ノンフィクションです。

 

 

 

 

それにしても、ダン・ブラウンの宗教を批判する内容はすごい。

今日も駅前で「エホバの証人」の人たちが立っているのを見たけど、ダン・ブラウン氏や彼の著書についてどう思うのか聞いてみたくなった。

 

ちなみに越前先生によると、ダン・ブラウン氏はバチカンに出入り禁止とか……あせる

 

 

 

人類の未来ははたして?