引っ越し前の手続き諸々、そして、引っ越し直後の作業もろもろでわたくしの心は折れました。

 

 百円均一ショップで買い物をするために、なにゆえに往復2時間も歩かねばならないのでしょうか。例えば部屋の窓にある防寒用のプチプチと、収納用のバスケットをそれぞれ100円とか200円とかで購入して、なぜにタクシーに乗っているのでしょうか。毎日のようにタクシーを利用している自分にどこかいら立ちを感じるものの、それ以外の選択肢のない環境。近場に必要な店はないし、必要な店を利用するためには激しく時間をかけるかタクシーを利用。小回りなんてものは…ないんですね。


近くて遠い田舎道




 

 

 いわゆる都会育ちのもやしっ子なため、公共の交通機関はあって当たり前。道は歩くもの。大量の公共の交通機関をどう乗りこなして行動範囲を広げるかが楽しみの一つなのですが、ここではそんなもの一切通用しない。根底から常識が覆されてしまっているので、思考が追い付かないのです。日本でも実家から最寄りの鉄道駅までは徒歩10分。気が向いたら自転車利用。線路に沿った場所でないところに行くときはバス。近場ならバイク(50cc)。 


   実家から出てからは、駅から徒歩30分くらいの物件に住んでいましたが、その時はもっぱら原付使用。実家でも、そのあとも自家用車はありましたし、免許も持っていましたし、何なら運転する仕事もしていましたけど、何となく車は好きじゃないという理由で選択肢としては最後に。


   そう、車…好きじゃないんです。運転そのものはどちらかというと好きなんですけど、車という空間の中に座っているのがあまり好きじゃない。あと、乗り降りの作業も好きじゃない。そして、駐車スペースを考えないといけない、駐車ができなくて目的地についているのにそのあたりをうろうろしているというこの時間が好きじゃない。メインテナンスに頭を痛めるのも好きじゃない。駐車禁止とられるかびくびくしながら駐車するのも好きじゃない。とまあ、こんな感じで車が好きではありません。なので、家族所有の車とか、会社所有の車とか散々乗っているくせに、自分では車を購入したことがないし購入しようと思ったこともありません。

 

 

 

 しかし。この数日で悟りました。この町では、何かしら移動手段を確保しなければ。

 

 

 

 少なくとも、家(職場)と、駅と、(繁華街と、)買い物する場所をつなぐ何かが必要。

 

   最初の候補は自転車。ほら、安価で購入できるし。幸い、この町は今見たところ比較的平ら。家から仕事場までを近道とると坂がありますが、大きい道路に沿って行けば平らです。大きい道路に沿ったって何分も変わるものでありません。まして自転車なら3分の差にもならない…たぶん。

 


 しかし…。自転車の場合。載せられる荷物の量に問題が生じました。生活の中で最も頻繁に使いそうな場面で必ず運ぶ分量の荷物が入らない…。





 

 自転車よりも荷物を載せられて、機動力があるもの。…バイク。原付ならそれほど高くないんじゃない?

 

 

 




  この町に来て思ったのですが、ソウルより全然運転がソフト。信号のない横断歩道が幾つかあるのですが、待っているとすぐに車が止まってくれて横断できるんです。あおり運転もないし、飛ばしまくり運転もない。ソウルでは日常だったクラクションの音も聞こえない。とにかく全体が穏やか。これならもしかしたらバイクでも行けるかもしれない。

 

 そんな気がむくむくと湧き出してきました。もちろん、韓国の冬は忘れてはいけません。極寒。それに二輪は雪が降ったらアウトです。それ以前に冬場の二輪なんて寒くて寒くてたまらないけどね。ええ、横浜でも通勤にバイクだった時代は冬場の通勤が苦痛でしたもん。






 

 最後に自家用車を持つ。…う~ん、やはり恐ろしく気が進まない。学校の担当者にも聞いてみましたが、私と同じ身分の外国人教師はほとんど車などを持っておらず徒歩での生活なのだとか。一応毎年昇給があって、ここにきて4年になる先生は最近自動車を買ったといっていました。4年くらいたって給料がそれなりに上がったら車購入しても維持できるかな。やはりまだ早い気がする。それに、どうにもこうにも駐車スペース探しとか、韓国での運転作法とか、不安材料しか感じない。ということは、自動車はやめたほうがよさそう。


 

 かといって、今のままにするわけにもいかない。悩みに悩んでバイクを購入することにしました。

 

 

 




 

 韓国では、自動車の運転免許で125㏄までのバイクに乗ることができるそうです。ソウルでバイクに乗っている友人に話を聞いたり、町にあるバイク屋さんに相談したりして、欲しいバイクを絞っていきます。できるだけ乗りなれてて操作に違和感のないものをということで、ホンダのバイクの中でスクータータイプの物を選びました。あとは、これをどうやって購入するかだ。いやぁ、意外と高いですよ、痛い出費ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 とか何とか言いながら、行動範囲内にある3軒のバイク屋に足を運びました。

  

  1軒目では「誰が乗るの?アジュモニが?出前の仕事でもするの?」と言われたので、その店では買わないことにしました。(苦笑) (それもあるけど、一番の理由は欲しいバイクを扱っていなかったことです) 


 2軒目は親切にいろいろ教えてくれ、車種を確定させていたのですが、その店では中古を扱ってないっぽく、中古がたくさんあるように見える別の店に行きました。出てきた社長に、欲しい車種を言うと、

「うちには今ないよ。ホンダのそれよりも、スズキのこれはどう?大きさや操作性はほぼ同じで、エンジンが一回り大きい分乗り心地もいいしおすすめだよ。値段も1万ウォンしか変わらないし」

とスズキのを教えてくれました。まあ、それでもいいって言えばいいんだけど…。実は話し合いを始める前に、社長が見当たらなかったので、ショールームの中を一人で見ていました。そして、ホンダの例のバイクがおいてあるのも確認済。でも、社長がないというならそうなのでしょう。

 

 社長さんと話しながら店内のバイクを見せてもらっていました。が、そのうち

「実は…お得意様限定で紹介しようと思っているバイクがあってね。」

と話が意外な方向転換を始めました。 



  どなたかが新品で購入したものの、そのバイクに乗って帰宅したら、家族から大反対され仕方なく販売店に持ち帰って引き取ってもらったという品物。限りなく新品。でも、登録上は中古。

そんな超レアないきさつのあるバイクだったら30万ウォンまけてあげるよっと。

 

 

 

 

…即決です。

 

あとは、保険やその他の手続きがあるのでそれをお願いし、メットも適当に見繕ってあげるよというのでお任せし(この町では自分で全部選べるわけではないのをこの数日で悟った)、帰宅したのでした。

 

 

 

 

 買っちゃったよ、バイク

 韓国で、運転しちゃうよ、私

 

 

 

 

 

(続く)