ミュージカル『地下鉄1号線』ネタ第三弾はやはり街オタ視点でしょう。



このミュージカルの設定は1998年のソウル。IMF直後で労働者が苦労を強いられた頃。主人公が降り立ったソウル駅にいたのは、そんな世の中に翻弄されてとりこぼされたホームレスやそれに近い人たち。


  後ろに見えるソウルタワー


…てよく考えたらソウルタワーって、ソウル駅の後ろじゃなくてほぼ正面にあるんだけどね。



  主人公が階段を一段ずつ降りながら希望の歌を歌う。って、1998年は旧駅舎だから、ソウル駅出てすぐ階段降りないんだけどね。



  この当時は今と路線が違ったソウルの地下鉄。1号線は龍山(ヨンサン)で分岐していて、青い線路は龍山(ヨンサン)から二村(イチョン)、玉水(オクス)、往十里(ワンニムニ)を通って清涼里(チョンニャンニ)経由で城北(ソンブク)まで。赤い線は龍山(ヨンサン)から地下ソウル駅、鐘路(チョンノ)を通って清涼里(チョンニャンニ)そしてそのまま議政府(ウィジョンブ)へ。地図上では清涼里(チョンニャンニ)までが赤い線でした。


  地下鉄1号線というから、仁川(インチョン)から議政府(ウィジョンブ)までかと思ったら、ソウル駅から清涼里(チョンニャンニ)までの話なんですね。




  さて、主人公の仙女さん、延辺に住んでる朝鮮族で、観光に訪れた韓国男子のチェビ(韓国語でツバメ=ヒモ)と婚約し、その婚約者に逢いにソウルに来るわけです。設定は朝鮮族のはずなのですが   朝鮮族というより北朝鮮の劇団員のよう   なんかちょっとピシッとマスゲームやってそうな雰囲気。調べてみたら2003年くらいの公演では中国雑技団のような衣装だったようです。この間の韓国人のもつ朝鮮族イメージの変化なのでしょうか。





   街オタ的には、車内アナウンスのセリフが今のと違うとか、駅のホームのタイルが昔のスタイルだとか、駅名表示板が2桁の昔のスタイルだとか、スクリーンドアがないこととか。地下鉄描写だけでも見所満載。




こういうやつね。51番から55番くらいが何度も出てましたよ。





  今も昔も変わらない車内販売とか…。




  今は更地になった588とか。

参考画像。こちらは千戸洞にある似たような街



何も知らない仙女ちゃん。婚約者チェビからもらった“チェビの住所”だけを頼りに地下鉄に乗ります。“チェビの住所”は清涼里洞588。

 道行く人に尋ねます、「588ってどこですか」。聞かれた人は「えっ」となり視線を背けて逃げていきます。仙女ちゃんはなぜ教えてもらえないかわかりません。



  まあ、全く知らなければ聞くでしょうし、あの全盛期の588を知ってる人なら、いかにも騙されたと言わんばかりの純朴なアガシにかける言葉もなくという通行人の気持ちもわかることでしょう。




   
  今はないものといえば113。


思わぬ事態に地下鉄1号線の中で茫然自失になる仙女ちゃんの言葉は、半島北側訛り。一般市民は訛りに反応します。なぜなら朝鮮族の言葉と北朝鮮の言葉、韓国視点からみたら同じだから。


 わ!スパイだ!申告しなきゃ!113


実は2018年の韓国にはスパイ申告電話番号は無くなってますが、その当時はまだまだ現役でした。



台所用ゴム手袋売りに来る人、
小さなカゴを持って物乞いをする盲人、
人が読み終わって置き去りにした新聞を読む人、






頑張って勉強を重ねたのになかなか教授になれず時給2万ウォン、1回2時間、週2回の非常勤講師として働く赤貧学者…(人ごとじゃない分、一番心が痛かった)ガーン







当時と違うところ、おなじところ、
昔を思い出して懐かしいところ、
外国人目線からは見えてなかったところ。




地下鉄の車内には次々と色んな人が乗ってきます。



  毛皮のコートを着込んだ御婦人、
ロッテデパートに行こうというのになぜ1号線に乗ったかなぁ。それも鐘3で乗り換えてとか言って。あそこ、もともとロッテデパートじゃなくてプランタンデパートとして作られてたんじゃない?それだと鐘3から乙支路3街というのはありだし…。(シンセゲデパートだと、東大門駅で4号線乗り換え設定にしなきゃならないしね)


こんな風に、街が変わっていったのに合わせて脚本手直ししたんじゃないかなと思うところを探すのもすごく面白いのです。

(今気づいたけど、和信〜ファシンデパートが、鐘閣駅にあったらよかったのにと思いました)


公演が2時間半くらいある長さだったのですが、面白くてあっという間に終わってしまいました。


ストーリーや登場人物を整理してからまた観に行きたいです。

写真撮影に応じてくださいました。