世の中において、数ミリ、数センチの違いが大きな違いを生み出す事が多々ある。
例えば、僕の本業である洋服の世界なら、ポケットの位置が数ミリ外側に付いてるだけで、太って見えるとか、衿が数ミリ大きいか小さいかで、おしゃれに見えたり、野暮ったく見えたりだとか。。

スポーツの世界なんて、それが特に顕著で、プロ野球選手のバッティングフォームで、肘の位置が数センチ高いか低いかでバッティングの結果が大きく左右したりもする。

有名な話で言うと、元阪神タイガースの藤川球児投手は素質がありながらもプロ入り後しばらくは泣かず飛ばずだったが、ある日コーチに軸足の位置を少し変えるアドバイスを受けたところ、後にプロの一流バッターがわかってても打てない「火の玉ストレート」と呼ばれるほどボールの質が向上し、日本プロ野球会を代表するピッチャーとなった。

そんなワケで僕の愛するスケートボードの世界でも同じような事が言えるのだが、
スケートボードの場合、デッキのセッティングが少々やっかいで、いろいろなパーツの数ミリの違いが複雑に絡みあってくる。
スケートボードのメインとなるデッキはもちろん幅や長さに細かい種類が存在し、更にそのデッキを支えるトラック、ウィールと呼ばれるタイヤにおいても数ミリ単位で高さや太さなどの違いがある。
そして、その組み合わせは何が正解という事ではなく、そのヒトの身長やプレイスタイル、普段滑るロケーションなどによって異なってくるのだ。

そして、スケーターにとってはそう言った自分のベストなセッティングをいろいろと試す事は苦悩であり、楽しみでもあるわけだ。

そんな僕も先日、久しぶりに新しいデッキを組む事となった。
というのも奥さんに誕生日プレゼントとして、大好きなブランドPALACEのデッキをもらったからだ。

早速、その他いろいろなパーツを新しく買い揃えるべく、ネットをディグっていたのだが、

偶然見つけたのが、その筋のトップブランド「スピットファイヤー」とネクストsupereme、PALACEの呼び声も高い「Fucking Awesome 」のコラボレーションによるウィール(タイヤ)。
しかもセールで少しお安くなっていたのだ。

いろいろ調べてみると形状がコニカルフルと呼ばれるタイプでスタンダードなものよりも少し太いというか、路面との接地面が広いタイプで、そもそも大きさも、個人的に求めてるよりも2mmほど大きい。

すごく悩んだ挙句、いろいろと不満な気持ちを抱えながらも、ブランド好きロゴ好きのオレは「fucking awesome 」のロゴに感情のすべてを持って行かれて、ポチっと購入ボタンを押してしまったのだった。。


それから3日ほどして、購入したパーツが続々と届き、鼻歌混じりに意気揚々とデッキを組む。


今まで使っていたデッキより0.5インチほど太いけど、上手くコントロールできるだろうか?とか

トラックを少し背の高いタイプにしたけど、違和感はないだろうかと不安を抱きながら、

早速夜中に家の近所でテスト。


ん、以前のデッキより安定してる!!

ところが「ガラガラーッ」と音がちょっとデカい。

以前より、ウィールの幅が太い分、荒れた路面だと滑走音が激しいのだ。


しかし「夜中だし音が響くんだな。」とあまり気にせず、満足気にその日はテストを切り上げた。


翌日、出勤のためいつものように自宅から駅までスケートを走らせたのだが、以前のセッティングより明らかに速い。


満足気に職場のある東京の某駅に到着、

そして職場の最寄り駅から職場までまたスケートを走らせたのだが、なんだかいつもと違う。。


職場のある地域は東京都内でも有数の高級住宅街にして、東京を代表するブランドショップ街なのだが、

何やら周囲が騒がしい。


よく見ると通りすがりの散歩の犬達が飛び上がるようにすごい勢いで吠えまくっているのだ。

そう、僕のスケートのカミナリのような滑走音に飛び上がるようにおびえおののいていたのだ。


アフガンハウンドやラブラドールといった、いかにも高級そうな大型犬に振り回されている上品なマダム達の姿はまさに地獄絵図だった。。


僕はそれを見て深く落ち込み、音の静かなウィールを新たに買わざるを得なかった。


たった1日で封印された「fucking awesome」のウィール。ブランドロゴにさえ惑わさければ。。


スケボーにあまり関心の無い方にしてみれば、「スケボーのタイヤ?高くても2千円ぐらいのもんでしょ?」なんて思うかもしれない。

何をおっしゃいますやら、それなりのモノだと1万円近くする。

我々庶民には地味に痛い出費なのだ。


それにしてもブランドロゴというのはヒトを惑わす悪女のようなものだ。


皆さんよく考えて欲しい。

普通に買えば数千円のTシャツが某レンシアガのロゴが入るだけで5万円になってしまう。


友人の縫製工場がパリの某リーヌのポロシャツを縫ってのだが、通常1着2千円ぐらいの仕事なのにブランド側は何も言わず1万円も払ってくれるのだそうだ。


あまりにも破格の金額に友人は驚き「こんなにもらって良いんですか?」と尋ねると


そのブランド担当者は何でもない顔でこう答えた。

「問題ありません。我々はこの商品を10万円で販売するので。」


そう。

信じるか信じないかはあなた次第です。