旅の目的 | 学生団体S.A.L. Official blog

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「ワタシニホンゴチョットハナセマス!」

インドはコルカタ。人でごったがえす賑やかな通りでそう声をかけられた。

絶対何か企んでる…

そう思った。インドの旅行記を聞けば、騙された、危険な目にあったばかりだったので、インド人=悪い人々…そんなイメージしか持っていなかった。
だが、彼は1人でペラペラと喋りだし、日本で仕事をしていたという他のインド人に電話までかけだした。彼はどうやらそのインド人に会って欲しいらしい。
半ば強引に彼に連れて行かれ、少し奥まった路地に入った。

やばい…何が目的なんだろう…

猛烈に警戒しながらついて行くと、さっき電話の向こうで話していた、日本で仕事をしていたというインド人がいた。
彼は日本に18年間住んでいるらしく本当に日本語が堪能だった。

「本当に何も買わなくてイイから、とにかく私の店に入って!」

何度もそう唆され、私たちは彼のシルクの店に入った。

そういうことか…買わされる…

そして彼はこう話し始めた。
「みなさん、凄く警戒してらっしゃる。それは当たり前ですよね。インドはみんな騙してくるしね。でも、10分でも私の話を聞いたらわかると思います。私は日本にずっと住んでいて今はインドで日本人に会えたから話したいだけなんです。ただそれだけ。

インドは凄く危険でインド人は悪い人々。そう言われます。私はそれがすごく悲しい。確かにインドには騙してくる人が沢山います。けれど全員がそうなのでは決してない。良い人も悪い人もいる、それは日本だって同じ。
それを、インド人=悪い人々と考えて、すべての人を疑って話さずにいては何も進まない。

話してみて、初めて人がわかる。

例えば、日本と中国だって同じこと。国家間の問題があっても個人個人の人との繋がりはそれとは全く関係ない。

話してみなければわからないんです。日本人は全員が悪い人と思って全く話さずに行ってしまうけれど、ほら、こんな風に10分でも話せば少し相手のことがわかるでしょう?」

その後彼はにっこりと笑って、私たちに温かいチャイを出してくれた。

そうして、はじめに予想していたように無理矢理シルクを買わされたりすることもなく、私達はその店を後にした。

これから彼は、このシルク店の収益で日本人が安心して泊まれる日本風のホテルを建てようとしているのだという。


旅の目的は場所ではなく人なのだと思う。
迂闊について行けば騙されるかもしれない。危険な目に会うかもしれない。
だが、それを怖がってばかりいてはおもしろくない。

文責:広報局1年 島田夏海