歴史の大切さ | 学生団体S.A.L. Official blog

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バリ島の村でのホームステイ3日目


まるで、アニメに出てきそうなほどの鶏の鳴き声で、無理やりたたき起こされる。


まだ、外は真っ暗。星が見えるような時間帯だ。
けれど、これがここでは当たり前。
バリの観光地から遠く離れたこのブンケラゴアン村での朝はいつも早いのだ。




眠気の残る体で起き上がり、部屋を出ると、おじさんがにっこりと微笑んでパギ(おはよう)と声をかけてきた。

パギ!と僕が返事をすると、彼は手に持った鎌を僕に差し出す。

「じゃあ、やるぞ!」



僕のホームステイは、アルバイトみたいな日々だ。



5時から牛の餌やりのための芝刈り。「あと、少し。あと、少し」と言って、30分以上これが続く。おじさんは楽しそうにやっているけれど、僕は腰痛との戦いに汗が止まらない。




もう、だめだ。





耐え切れず、腰を伸ばして大きく伸びをする。空を見上げると、日の出前のうっすらと明るい空に、日本よりもずっと明るい星々が瞬いている。





少しだけ、疲れを忘れたような気がした。


よーし。あと、少し。あと、少し。




こうして、僕のホームステイ先の家。オカさん一家の日常は始まる。



オカさんの日々は、牛と常に一緒。一日のほとんどを牛のために費やしているようで、もはや、家族以上に大切に扱っているように思える。牛の方も言葉が通じているみたいにオカさんの言うことは素直に聞き入れる。



けれど、こうして牛と触れ合うことも初めての自分にとっては、その仕事のほとんどが牛との格闘だ。



牛の水やりだってそう。モー・モーとのんきな声を出しておきながら僕が手綱を持つと突然目つきが変わる。戦闘モードのスイッチが入る。

「オマエのいいなりになってたまるか」みたいな仕草をし、全力で暴れ、逃げる。リードを引き戻そうとするが誰が牛に勝てるだろうか?

いや、誰も勝てない。肩が抜ける勢いで引き離された。



オカさんは僕を見てニヤニヤしながら「No Problem!!」。長年の信頼関係が見えた瞬間だった。少し羨ましかった。



夜はオカさん甥の結婚式の準備だ。普段の日常とは違う、でも大切な仕事だ。微力ながら家の仕事を手伝ったためか、家族の一員として準備に紹介してくれた。昨日の夜を含めて今日で2回目。



甥の家に行くのはすごく楽しい。まず英語が通じる。安心感が半端ない(笑)。それに同世代の仲間がいて話す相手がいる。それが一番うれしい。



同世代の子の中の名前はプトゥ。15歳で将来の夢は体育教師。甥子さんの弟だ。今は地元の高校に通っている。それに今日はオカさんの息子、アルボルがバリの中心部から祝うために仕事を休んで帰ってきた。

他にも親戚の男がたくさん。



今日は賑やかだ。男祭りだ。



バリの男はたくましい。同じ同世代で同じ人間とは思えない。高校時代、アメリカンフットボール部で鍛えた体も全然冴えない。日本に帰ったら筋トレしよう(笑)。



男たちの会話はどこに行ってもくだらない。下ネタ、下ネタ、くだらない冗談、下ネタそんなもんだ。昨日はそれで終わった。それだけでもただただ楽しい。それだけの会話でもう通じ合えたと思った。



今日は、バリの酒を交えながら談笑。バリは18歳から酒が飲めるらしい。

あれ?そういえばプトゥまあいいや(笑)



今日は、甥子さんの仕事の話だ。

何が仕事?

「軍隊さ。ナガサキ、ヒロシマBoom Boom Bang!!


一瞬凍りついた。みんなジョークで笑っている。急いで笑いで一生懸命隠そうとした。

しかし、アルボルは察してしまった。僕の顔をみてアルボルはこう言った。

「日本も俺たちのことを占領したよな」




太平洋戦争中、日本は無差別に東南アジアを占領した。

色々とひどいことを行った。たくさんの無実の人が亡くなった。

そのことは今でもインドネシアの人々の記憶に残っている。


返す言葉がなかった。





歴史の悲劇は受け継がれていく。

過去の傷は簡単には拭えない。世代が代わり、平和が訪れても。





昨日で分かり合えたと思った自分が愚かだった。



彼らの言動は間違っている。それでも責めることができない自分がいた。





お互いを真に理解するということは過去の過ちを通して相手を思うこと。

「悲劇を背負って前に進もう!!」アルボルの言葉が僕を救ってくれた。



原爆の悲劇、戦争の負の遺産、殺戮の過去。

悲しい自分たちの過去の歴史をお互いに伝えていく。

一人の大学生として歴史の再認識を問われる瞬間だった。

「真の平和、真の友情はお互いの過去を振り返り受け入れないと訪れないよ」

と教えられているような気がした。



今日でホームステイが終わる。



最後に感謝を込めて



Thank you for all the things you did for me.

I was the luckiest men on the face of the Earth.



本当にバリの人々に会えてよかった。


[文責:マネージメント局1年 入江勇樹]