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 いつものび太をいじめているジャイアンは、悪者なのだろうか。それとも、悪いところもあるけれど、のび太といい関係を築いている存在と言えるのだろうか。


 てっきりネパールはインドと「セット」の国で、似たもの同士仲がいいのだと思っていた。同じヒンドゥー教だし、人の顔は濃いし、日本では「インド・ネパール料理店」の看板をよく見る。

 だから、案内人のヒムラルさんが「私はインドが大嫌いです」と言ったとき、私はずどんと心臓を打ち抜かれたような気がした。インドとネパール、それぞれの国自体のことを知っていたつもりでも、2か国の間にある関係を、何も知らなかったのだ。



 インドは、ネパールが発展することを嫌がる。ネパールが作った電力はインドに1ルピーですべて買われ、ネパールは自国の電力をインドから2ルピーでまた買うはめになる。お金がないネパールを中国が支援しようとすれば、インドは世界へ向けて「ネパールと中国の仲は険悪だ」という宣伝をおこない、その支援を邪魔しようとする。そしてまた自国

の物を高価格で買わせるのだ。産業がないネパールは、インドからの輸入を打ち切られると生活できないので、何も言えない。まるでジャイアンとのび太のような関係だと思った。私は、ネパールを「いじめている」インドを、嫌いになってしまいそうだったし、ネパールの人たちには、エゴで動く大国に立ち向かってほしいと思った。

 でもそれは、単なる部外者が言うきれいごとなのかもしれない。

ヒムラルさんの叔母のミーツさんのだんなさんは、インドへ出稼ぎに行っている。その仕事の給料がいいおかげで彼女たちは家を建て、子供を私立の学校へ通わせることができている。昔の生活よりだいぶよくなった、と彼女はすかっと笑った。でもその表情を見て、私は何かがつっかえるのを感じた。「ネパールを搾取しているインドでだんなさんが働いていることに、嫌悪感や違和感はないんですか」。すると彼女は少し眉をあげて答えた。「ネパールに仕事がないんだもの、仕方ないわよ」。



 ネパールはインドに搾取されつつ、その同じインドに支えられている。ヒムラルさんやミーツさんは、インドのエゴをぐっと我慢しているようにも見えたし、仕方ないと割り切っているようにも見えたし、妥協しながらも他国と共生しようとしているようにも見えた。

 エゴでネパールを振り回しているインドではあるが、それを単純に「悪者」と呼んでいいのか、わからなくなった。


 のび太はいつもジャイアンにいじめられて、半べそをかく。悔しい思いをする。しかしそんな時、ドラえもんは彼の気持ちや状況を理解して助けの手をさしのべる。

 ネパールには今、そのような存在がいない。このままネパールが今の状況をあきらめて、腐っていくことがないことを願う。



【広報局2年 原菜月】