神の子【インド】 | 学生団体S.A.L. Official blog

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神の子。


その名に馳せた思いも虚しく、彼らの境遇に変化は訪れない。
触れることも、近づくことも、見ることも、さらにはその声すらも聞くことを許されないとされた彼ら。


不可触民という存在をご存知だろうか。
それはカースト制度四階級に属さない、いわば階級をも持たない外の者。「インド独立の父」として親しまれ、非暴力・不服従で知る人も多いマハトマ・ガンディー。そんな彼は、「現世で苦しむ彼らは、来世において必ず良いカーストに着く」として不可触民をハリジャン(神の子)と呼んだ。


差別撤廃という願いは、思いと裏腹に独り歩きする。


「ガンディーはカースト制度を残したまま、差別撤廃を訴えた。だが、カースト制度と差別はセットなのだ。差別撤廃を叫び、カースト制度を廃止しなかった彼はただの偽善者だ」。こう述べたのは、不可触民出身にして現インド憲法を起草したビームラーオ・アンベードカル。この実力者も耐え難い差別に苦しんでいた一人だ。


1950年カースト制度撤廃。彼の望みは果たされるも、社会にほとんど変化はなかった。そしてその6年後、ついに差別からの脱却の道を彼は選ぶ。「自由・平等・博愛」を掲げ、このインドから生まれた仏教への改宗という。約50万人の民衆が彼に続いた。


異国からやってきた自分には、誰がどの階級に属するかは見た目ではわからない。そして、それはインド人にも着実に広がっている。


「カースト制度はただ差別の道具として見て欲しくない。もちろん撤廃されてよかったし、早くその影響がなくなればいいと思うよ。ただ、分業という意味でとても価値があったんだ。二世代先までには完全になくなるはずさ、きっと」。インドのMITと呼ぶに等しい、IITに通う大学生が自分に語りかける。


シュードラ出身のガンディー。不可触民出身のアンベードカル。両者ともに低い階級に属し、差別を憎み変革をもたらそうとした。この偉人たちの望む未来は、いったい何世代後にやってくるだろう。


現在も仏教、キリスト教、イスラム教などへと改宗するものが後を絶たない。宗教が差別をなくし、安らぎを与える。触れられることを禁ぜられた神の子。彼らは違う宗教の中で、誰かの温かい手の温もりに包まれているのだろうか。

【広報局 瀬谷】