J.K.ローリング、という名前を聞いて、皆さんがまず思い浮かべるのは大ベストセラー、ハリーポッターシリーズだろう。私もハリーポッターは大好きでよく読んでいたのだが、以前、彼女が行ったスピーチを聞くことがあった。
そのスピーチの中で彼女は想像力の重要性について語っている。彼女の言う想像力とは、ハリーポッターのようなおとぎ話を生み出す力のことではない。もっと広い意味での、誰もが持っている力のことだ。
J.K.ローリングは、作家として成功する前、アムネスティーインターナショナル(人権保護を訴えるNGO)のアフリカ担当調査部で働いていた。そこで彼女は、故国で拷問にあって精神を病んだ若者や、政府に反抗的な発言をした報復として、母親を処刑された人と出会ったのだという。そこは、民主主義国で育った彼女には知ることも、経験することもない悲しみや苦痛、恐怖に満ちた職場。悪夢を見る日が何日も続いたと彼女は語る。しかし、それと同時に彼女がその職場で知ったのは、人間の持つ想像力の素晴らしさだった。
アムネスティーでは、今まで拷問されたことも投獄されたこともない何千人もの職員達が、拷問の被害者や囚人のために活動していました。人間が他人に共感できる能力こそが、人々が力を合わせてアクションを起こし、命を救い、囚人を釈放する力になったのです。幸福と安全が保証されているごく普通の人たちが、今まで見たこともない、そして一生会うこともないだろう赤の他人を救うために、大勢集まってきたのです。その一端に私が参加したことは、私の人生の中でもっとも衝撃的な、そして刺激的な経験となりました。
人間は、地球上に住む他のいかなる動物とも違って、自分が経験しなかったことをも、学び、理解することができます。人間は他人の心を思いやり、他人の状況を想像する力を持っているのです。
国際協力について考えるとき、想像力は必要不可欠だ。
この力が、自分が恵まれた、満足した生活をしている中で、海を越えた遠い国の抱える問題を考え、なんとかしたいと私を突き動かしているのだと思う。
ただ気を付けなければならないのは、想像力がよいことばかりにはたらくわけではないということ。間違った知識や理解に基づいた想像力が、世界中にいまだに存在する偏見や差別を生み出す根源のひとつであると私は思う。
だから、しっかりと学び、理解することを怠ってはいけないのだろう。学ぶこと、理解することがあってこそ、人間の持つ想像力は、誰かのための「力」になる。
そう心に留めて、これからも国際協力に携わっていきたい。
JK Rowling speech
http://www.ted.com/talks/jk_rowling_the_fringe_benefits_of_failure.html
【文責:広報局 幡鎌理美】