iPod、iPhone、iPad。
最近巷ではApple社による愛があふれています。
昨日5月28日は日本でiPadが解禁されるとあって、販売店には1000人を超す人々が列をなしたそうです。
iPad発売、銀座の直営店前には行列
行列に並ぶのも、新しいものにもあまり興味を持たない私だけれど、このiPadの存在はかなり気になっています。なぜか?
それはiPad上の「電子書籍(※1)」というコンテンツに大きな魅力、そして同時に大きな脅威を感じているからです。
iPadの持つ大きな特徴として、現在紙媒体で発行されている雑誌・新聞・書籍が読めることが挙げられます。「液晶画面上で本を読む」という文化はまだ日本においては根付いていませんが、既にアメリカでは「Kindle」という電子書籍を読むための端末が一大ブームを巻き起こしています。先日、私も学校へ向かう南北線の電車の中で、ごく自然なしぐさでKindleを読むアメリカ人女性を見かけました。
このKindleはモノクロのe-インクという特殊なインクを用いて文字を表示しており、紙本来の質感に近い文字表示がされるのが特徴です。
そして一方、今回発売されたiPadはパソコンと同程度の美しいカラー液晶。つまり、iPad上では書籍をより鮮明に、挿絵や漫画を立体的に、さらには紙面上に動画も挿入することも可能となっています。
『パソコンと同じような美しい液晶画面上で、何千何万冊もの書籍を簡単に購入でき、従来の書籍よりも視覚的に楽しみながら読むことができる―。』
ことばだけを見るとなんだかわくわくしますよね。
ですが、私はこの「電子書籍」というコンテンツに少し違和感を持ってしまうのです。
皆さんは本屋さんに行った時、どうやって本を買いますか?
作家さんで選ぶ・表紙のインスピレーションで選ぶ・あらかじめ読みたい本を選んでおく
買い方は人それぞれだと思います。
だけど、そこには共通するものがあります。
それは本と出合った時の「わくわく感・どきどき感・満足感」です。
その本の中にどんな物語が繰り広げられているのかを想像したり、それによって自分の考えがどう変化するのかの未知の世界に想いを馳せたり、本の重みや質感から満足感を得ることは、誰もが体験したことがあるのではないでしょうか。
私にとって本は、そういう小さな幸せが集まってやっと完成するものなんです。
ただ内容があればいいのではなく、その本の持つ紙の質感・重み・書き手の想いのこもった装丁、そして読者の想い―。
それらすべが出会うことができて、初めて本は形や意味をなすものだと考えています。
だからこそ、利便性や審美性を追求した電子書籍という本の在り方にはどうしても「あれ?」という違和感を感じてしまうのです。
しかし近年、日本においても、電子書籍事業は拡大しています。
【参考:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100527-OYT1T01029.htm】
だけど、ちょっと待った。
本のあるべき場所ははたしてiPadなどの電子メディア上なのでしょうか?
その答えは今、私がここで出すことはできません。
けれど本に対する愛、作者に対する愛、それらを持ち続けることができるのはやはり紙でできた書籍だと私は思います。
電池残量などとは無関係で、いつでも無条件にそこにある。
そんな恋人のような存在が人々にとって本当の「本」なのではないでしょうか。
【文責:赤津ともみ】
※1.紙やインクを利用した印刷物ではなく、電子機器のディスプレイ上で読むことができる出版物の総称。