中国と日本。 | 学生団体S.A.L. Official blog

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灰色の空。
寒々とした風景。
道にあふれかえる人々と、その喧騒。
日本人に対する非難の目。



「恐怖」。
―それこそが、わたしが幼いころ中国に対して抱いていたイメージだった。

日本が第二次世界大戦で中国に対して行った残忍な行為、
それに対して現在まで中国の人に残っている、日本への恨み。

中国、といって思い浮かべるものはそんなものばかり。
テレビや映画などで見る中国は、わたしにとってそういう存在だった。


だから、
「春から中国に住むことになったよ」
と父に言われた中学1年生の冬、少し大げさに言ってしまえば、まさに目の前が真っ暗になるような心地がした。
友達にも、大変だね、と同情された。
同情されるのが辛くて、「大丈夫」と強がって言ってみては、心の中で泣いていた。




あれから5年。
大学1年生になったいま、わたしは中国が大好きだ。

青い空。
あたたかな街並み。
道にあふれる活気と笑い声。

上海に住んでいた2年間、日本人だからといって嫌な思いをすることは全くと言っていいほどなかった。
中国語の先生は「日本人の女の子は本当におしゃれで綺麗ね」といつもいつも褒めてくれたし、タクシーの運転手さんと日本語と中国語を教え合うことも幾度となくあった。


印象に残っている出来事がある。
ある日わたしは、上海の中心部にあるデパートでバッグを盗まれた。
財布やiPodなどの大事なものをいきなり盗られた驚きと喪失感で涙が止まらなかったわたしに、父の同僚である中国人の女性が言った言葉が忘れられない。


「嫌な思いをさせて本当にごめんなさい。
でも、お願いだから、中国のことを嫌いにならないでください。」




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尖閣諸島問題を機に、改めて日中関係の歪が浮き彫りになった。
双方に、相手をよく思わない気持ちがあることは否定できないだろう。
テレビで中国の漁船の乗組員が船長を擁護しているのを聞くと、怒りがこみ上げてくる気持ちもわかる。
中国政府が正しいとは到底思えないし、日本を悪く言われるのももちろん不快だ。



でも、じゃあ中国が嫌いなの?と聞かれたら、答えはノーだ。
中国には大切な人がたくさんいる。
大切な思い出もたくさんある。

昔のわたしのように、いわゆる”反日国”としてのみ中国をとらえて批判している人を見ると、もう少し中国を知ってほしい、中国の人々と関わってみてほしい、と思わずにはいられない。



「国」対「国」レベルでのみ日中関係を考えるのではなく、「人」対「人」でも考えられたなら、ほんの少しでもこの歪が解消されるのではないだろうか。

過激派の人が、「中国人観光客は日本に来るな」と言っているのをたまに聞く。
本当に、本当に悲しい。
むしろわたしは一人でも多くの中国人に日本に来てもらって日本のよさを知ってほしいし、わたし自身もっともっと中国のよさを知りたい。
それが日本のためにも、中国のためにもなると思うからだ。



中国と日本の間には、決して目をそむけることのできない暗い歴史がある。
お互い、悪いところは嫌というほど見てきたはずだ。
だからこそ、今度はいいところを探していきたい。


そんなの理想にすぎないと笑われるかもしれないが、わたしはそう強く願っている。



文責:石塚萌子