折り紙というと、どのようなものを想像しますか。
世界中の子ども達と心をつなぐ「ハローフォックス」ーこれは一枚の紙をわずか六回折るだけでキツネが挨拶するように顔を出す折り紙で、作るのは盲目の折り紙作家、加瀬三郎さんです。
昨年名誉都民となった加瀬さんは、小学六年生のとき病気で視力を失いました。それからマッサージの道へと進みますが、二十九歳のとき夢中になれる趣味を求めて折り紙と出会い、暗闇の中で、指先の感覚だけを頼りに独自の創作折り紙を生み出しました。
その後、イラク・カンボジアなどで折り紙を教えるようになります。そして全盲というハンディを負った自分よりもっと厳しい現実に挑んでいる人が沢山いることを知ったそうです。
加瀬さんは今年四月、八十一歳で亡くなりましたが、その折り紙は言葉の壁を越えて、世界の子ども達の心に生き続けることでしょう。
これは、私が高2の夏、東京都代表として出た、放送部の全国大会で読んだ、アナウンスの原稿です。
アナウンスの原稿は、自分で作ることになっているんですが、この原稿は、私の書いた何枚もの原稿の中でも、とても好きな一枚となっています。
そして、このメッセージは今でも私が伝えたいことでもあります。
この原稿を書いていた時、加瀬さんの弟さんに会い、色々なお話を聞かせて頂いたり、色とりどりの加瀬さんが作った折り紙を見せて頂きました。
加瀬さんは、盲目で、しかも言葉がわからないので会話もできないのに、子どもたちに折り紙を教え、子どもたちも、その折り紙を作っていったと、弟さんは話していました。
「折り紙」という一つの道具があるだけで、加瀬さんと子どもたちは繋がることができたのです。
「心と心が通じ合えば、なんでもできる」
と加瀬さんは嬉しそうに語っていたそうです。
「心と心が通じ合えば、なんでもできる」
この言葉はよく言われますが、加瀬さんのこの言葉には、説得力がありました。
九月、私はカンボジアに旅立ちます。
そこで、私にとっての、「ハローフォックス」のような、子どもたちと心を繋ぐものを探したいと思います。
あなたにとっての「ハローフォックス」はなんですか?