大阪松竹座

関西・歌舞伎を愛する会 第二十回
七月大歌舞伎

平成23年7月3日(日)~27日(水)


昼の部


一、播州皿屋敷(ばんしゅうさらやしき)

            浅山鉄山  愛之助
            岩渕忠太  亀 蔵
            腰元お菊  孝太郎


二、新歌舞伎十八番の内素襖落(すおうおとし)

            太郎冠者  三津五郎
             鈍太郎  亀 蔵
            次郎冠者  巳之助
             三郎吾  萬太郎
             姫御寮  梅 枝
             大名某  秀 調


三、江戸唄情節(えどのうたなさけのひとふし)

  序幕 芝居茶屋伏見屋より
  大詰 村山座の舞台まで

            杵屋弥市  仁左衛門
      芸者米吉後に女房お米  時 蔵
           坂東彦三郎  三津五郎
            市村家橘  愛之助
          俵屋娘おいと  梅 枝
            番頭平助  竹三郎
         小揚げの七兵衛  彌十郎
        伏見屋女将おふさ  秀太郎



夜の部


一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

  車 引

           藤原時平公  我 當
           舎人桜 丸  孝太郎
           舎人杉王丸  巳之助
           舎人梅王丸  愛之助
           舎人松王丸  進之介



  通し狂言

二、伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)

  相の山
  宿 屋
  追駆け
  地蔵前
  二見ヶ浦
  油 屋
  奥 庭

             福岡貢  仁左衛門
            油屋お紺  時 蔵
           料理人喜助  三津五郎
             奴林平  愛之助
            油屋お岸  梅 枝
     徳島岩次実は藍玉屋北六  亀 蔵
     藍玉屋北六実は徳島岩次  秀 調
            油屋お鹿  彌十郎
            仲居万野  秀太郎
            藤浪左膳  我 當
 
 
 7月の松竹座は仁左衛門を中心とした座組。松嶋屋一門に三津五郎がつく。
 昼の部は、初めが「播州皿屋敷」。お菊さんが、「一枚、二枚」とお皿を割る怪談話。歌舞伎ではこれと岡本綺堂の「番町皿屋敷」があってこちらは歪んだ恋愛劇。かかるとして番町皿屋敷のほうがかかる。めづらしい演目。
 中幕が「素襖落」 福地桜痴の作で狂言が題材の舞踊物。大名の使いで、丁重にもてなされて、お酒を頂いてうえに、素襖、礼服を頂く。お礼に那須与一の舞を舞う。大名のもとにもどったところで一悶着。したたかに酔いながら、舞を舞ったり、酔態を見せたり、踊りぬく。
 品のいい、ダンスコメディといったところ。
 踊りの名手三津五郎の踊りに注目。昼の部の注目か。
 切に江戸唄情節。これは昔、十五代目市村羽左衛門をあてて書いたもので、三味線弾きの弥市が、どたばたのあとに三味線弾きの仕事に戻る話。16年前に孝夫さんのときに演じた作品。
 終わりに仁左衛門が三味線の演奏をやるのが見もの。
 夜は「車引」。これは菅原伝授手習鑑のなかのひとつで、菅原道真に三つ子の話が絡む。
 車引は三つ子の話で、道真公に恩義のある桜丸、梅王丸が、吉田神社に参詣の藤原時平を襲う話で、時平の行列の中に三つ子のひとり松王丸がいる。歌舞伎の荒事の要素の入る作品。
 ストーリー性よりも、様式美の強い作品。最後に梅王が六法を踏む。
 桜丸に、女形の孝太郎、梅王丸に、愛之助、松王丸に進之介、時平に我當が演じる。
 最後が「伊勢音頭」の通し狂言。伊勢の宿屋で起きた大量殺人がもとの話。これは、刀の折紙、鑑定書をめぐる話で、折紙をめぐって、話が二転三転していく話。主役の福岡貢は、坊ちゃん育ちのおっとりとした人物で、世間知らず。刀の不思議な魔力に引き込まれてゆく。和事の魅力を知っていただければなと。これを仁左衛門が演じる。襲名のときの役。これに何かといじわる、ちゃちゃをつける仲居の万野が不思議な魅力の役で普段は女形がやらず、立役が演じるが今回は秀太郎が演じる。この役がこの狂言のキーパーソン。昔、嵐徳三郎の万野がいかにも上方的でいい味でした。山あり谷ありのドラマで楽しめる。
 充実した座組です。
 
衛星劇場で宮藤官九郎の「大江戸りびんぐでっど」が放送されてたので見る。
 クドカンということで期待はしていたがよくわからなかったのが正直な感想。
 江戸時代に派遣やゾンビという趣向は奇抜さがあっていいのか知れないが、全体を通してみると、わざわざ派遣やゾンビを使う意味合いが見えてこない。
 派遣でも、口入屋に言い直せばいいわけだし、ゾンビを使わなくても、奇抜さ、異端さを出すなら別のやり方でインパクトを出せる。
 黙阿弥や南北をみているような、不気味さ、おそろしさが、垣間見えてくるわけでもない。
 野田秀樹のような歌舞伎の様式を利用して、現代社会への批判、リアリズムが見えてもない。
 どっち、つかずで中途半端に終わった印象が強い。
 後半、染五郎の半助が「おれは生ける屍だ。」と自虐的でブラックユーモアが入り混じっておもしろさがでてくるが、では何のための、派遣、ゾンビと感じてしまう。
 人間関係も古いし、人物描写も浅い。
 クドカンにとっても歌舞伎とはと聞きたくなるような作品に思える。
月の文楽は源太夫、藤蔵の襲名といいめでたいものであるが、源太夫の休演、口上のみの襲名披露。襲名が長丁場を考慮のうえでなされたことかもしれないが、大阪での襲名の休演はいいものではない。源太夫といってもなじみのある名前ではなく、これはおそらく、咲太夫の綱太夫をにらんでの襲名とかんぐりたくもなる。因みに、咲太夫は先代八世綱太夫の子に当たる。藤蔵にしても、古い人には山城の相三味線を務めた人。これも最近の人にはなじみがうすい。
 第一部はどうなのかと思っていたが、充実はしている。
 初めが「源平布引滝」、実盛物語のくだりを軸に展開。
 初めは、竹生島。歌舞伎ではあまり演じられることはないが、これがあると、小まんが腕をきられた理由、実盛の人物像がつかめるからいい。端場なのでどうかなとおもっていたが、清治の三味線を初め、呂勢、松香、三輪太夫を揃っていて、玉女の実盛が充実していたので、おもしろかった。
 全体的に、玉女の実盛が主家、源氏を裏切り、平家に使えた報いとして、源氏に討たれる覚悟を終始みせているので、この物語の骨格ができていたので、グレートがでてくる。
 かつての師匠の玉男を彷彿される。
 清治がこの場の三味線を弾いているが、本来この場を引くものではない。切場なりを弾きべき人。呂勢太夫の成長を期待したい。
 口上は、源太夫、藤蔵を真ん中に、住太夫、寛治、清治、文雀と口上を述べるが本人の口上はなし。歌舞伎の口上よりはシンプルでいい。
 つぎに糸つむぎの段。咲甫太夫、清旭。ここは一通り。
 瀬尾十郎詮議の段。歌舞伎でいうなら実盛物語の前半。住太夫、錦糸。ここはおもしろく、実盛、瀬尾、九郎助のバランスがそれぞれに拮抗しておもしろい。勘十郎の瀬尾、和生の九郎助と玉女の実盛の互角に渡り合う。歌舞伎では実盛が中心で物語が展開していくの違いが出ていていい。住太夫の語りは、瀬尾の語りが手強く、役目に忠実な怜悧な官僚が見えてくる。
 問題の実盛物語の段。源太夫休演により、英太夫、藤蔵。
 難しさをしればいいくらいの、難所のなかの難所。語りが語るほど変化していくので、難しさこのうえない。ここを英太夫は、見劣りすることなく語り切る。敢闘賞もの、殊勲賞ものである。ここは評価したい。ややグレードに欠けることはあったが見劣りするわけではない。
 ここは玉女の実盛がきっちりと締める。
 かつての玉男師匠を見る思い。
 「酒屋」 これは、文楽でやることはあっても歌舞伎でやることは少ない。藤十郎で一度見たのみ。これは見るというよりも語りを聞くもの。太夫は文字久太夫、千歳太夫、津駒太夫と技量に秀でている太夫ではないが、愚直なまでの語りが、お園の茜屋の苦悩とは別に、半七と三勝の悲劇が見えてきた。とくに、女芸人の美濃屋三勝の。歌舞伎では、たいしたやくどころではないが、文楽で聞くと、お通の子までなしたが、母である前に、女であることを捨て切れなかった女性の悲劇が見えてきた。張った乳を娘に含ませたくても含ませられない悲劇、戸をひとつ隔てての。
 三勝にとっては死への道行。対する茜屋はお通を得たことでかすかな光が見える。
 その対比が見えてきたので良かった。
 人形はお園は文雀。蓑助の十九の少女のあどけなさ、娘のもつ可憐さとは異なる、内輪で家の納まる女性。くどきはじっくりとみせる。
 別な視点を見せてくれた意味合いでは見ごたえのある第一部であった。