交渉力 | 売上増を実現する宴会セールステクニック

売上増を実現する宴会セールステクニック

小手先ではなく心構えからしっかり考える、目から鱗のホテルセールス実践論。当たり前だけど大切なことを、ご一緒に確認していきましょう!

 昭和51年4月、札幌グランドホテルで営業マンをスタートしました。

以下特に交渉力が必要とされた(結果的にですが)案件の報告です。

具体例①

札幌市白石区に文具・事務用品の卸会社がありました。

初受注した展示会の打合せで一番難題と考えていた展示会室料交渉が解決、担当課長共々ホットしていた時に

専務が登場、商談コーナーでお客様に提供するコーヒーの単価を半分にしろとの仰せです。

期間中1500~2000杯提供が予想され50万円前後の経費が掛かります。

当時宴会場で提供するコーヒーは1杯300円前後だったように記憶しています。

「水で薄めてもいいから、まけろ!」

「無理です。出来ません。」とお断りしました。

営業マンになって2年位経過していたでしょうか。

30歳前の若造にとって無理難題、当然会社から値引きの権限はあたえられていません。

勿論上司・先輩から「コーヒー値引き要求された時の応酬話法」などありませんでした。

予想困難な想定外の質問でした。

「まけろ!」「出来ません!」の押し問答が続きました。

あんまりシツコイので私も、

「コーヒー代はホテル従業員の給料になります。ホテルマンの給料は決して高くないのです。出来ないものは出来ません!」

と申し上げたところ専務も矛を収めてくれました。

2~3日後担当課長から電話があり、

「伊東さんのコーヒー値下げ出来ない理由に専務が感心していた。」

とお褒めの言葉を頂戴しました。

咄嗟の思い付きで申し上げた「出来ない理由」が成功しました。

 

具体例②

昭和47~50年頃、札幌グランドホテルでは2~3月中旬まで宴会場がガラガラ状態で展示会大歓迎でした。

展示会には多くのお客様が来てくれ、館内各セクション(特にレストラン並びにパン、クッキー販売)に波及効果が期待できます。

2月の三越と3月のミズノのゴルフ用品の大展示会は、グランドホテルから展示会室料無料で開催をお願いしていた店外催事です。

 

 その頃グランドホテル宴会販売部の責任者が変わり、方針が変わりました。

三越とミズノから展示会室料をいただくことになったのです。

三越には私、ミズノにはベテラン営業マンが交渉にあたるようにとの業務命令です。

直ちに担当挨拶と料金発生する旨お知らせに伺いました。

当然予想された通り、三越の担当者は全く料金発生を認めてくれません。

事の始まりはホテル側から一方的に室料頂戴しないので展示会開催をお願いしていたのです。

それが突然(開催7ヶ月前)料金発生するとのお知らせ、そりゃ客も怒りますよ。

せめて部長職クラスが三越に出向き、方針変更を伝えてから私のようなヒラ社員が料金交渉に行くのが筋。

それがいきなり経験の浅い私に白羽の矢、ケンモホロロの応対です。

私も手ぶらではホテルに帰れません。怖い上司が待ってます。

三越側も最初出てきた担当者ではラチが明かず、やがてゴリ押しで有名な責任者が登場しました。

具体的料金を提示しての交渉は全て拒否、気まずい沈黙が続きました。

交渉を進めているうちに、三越では正社員、臨時職員に社員割引をしていることを聞き出しました。

その割引制度をグランドホテル全従業員(当時約600名在籍)に適用させてくれれば展示会室料は頂きませんと提案しました。

勿論私の思い付きで、ホテル責任者の了解は取ってません。

この提案もあっさりと拒否。

 

しばらく沈黙の後私が、

「分かりました。室料は要りません。その代わり催事中の会計をホテルでします。売り上げの3%(確か)ホテルにください」

この提案も勿論ホテル上司の許可はありません。咄嗟の思い付きです。

 

 三越担当者は少し考えた後、伊東案の「3%下さい案」は拒否、渋々具体的な展示会料金交渉に入ることを認めてくれました。

2時間に亘る料金交渉が終了しホテルへ向かう帰路、夕方4時頃の太陽がまぶしかった光景を今でも覚えています。

 

 ミズノ担当の先輩営業マンは敢え無く撃沈、ホテル課長職がでて展示会来館者に大量のコーヒーチケットと相当値引きしたレストラン利用券をミズノに提供してある程度の料金をいただくことで決着したようでした。

今から45年以上前の出来事です。

今ではこんな交渉に若い営業担当を行かせるとパワハラですよね。

 

具体例③

 34歳で京王プラザホテルに転社してから2~3年後、日本で一番大きい精密機械会社のお得意様招待会を受注しました。

京王開催の前年、京都都ホテルでの大会を下見、参考にしてくださいとの主催会社からの要望でした。

大会冒頭、京都の舞子さん15名が、会場内暗転の中、お琴の演奏で入場素敵でした。

お客様900名余、司会は徳光和夫さん、それはそれは素晴らしかったですよ。

 

 初日のウエルカムパーテイの料理を観て、宴会料理は京王プラザの勝ちと確信しました。

唯一デザートコーナーだけは京の和菓子が素晴らしかったのですが宴会料理は平凡でした。

帰札後見積もり提出、ウエルカムパーテイの料理単価は京都都はテルは15000円、

札幌は開催時期の5月を勘案、総料理長とも相談、料理単価18000円で提出しましたが案の定主催者から、

「なんで札幌のホテルが京都より3000円高いんだ?」

キツイ質問がきました。

私は16000円でまとめたかったので想定内のクレーム、

そこで5月札幌でしか提供できない食材を提供するには2000円下げるのが限界と説得成功しました。

子羊の1頭焼き、マグロの一匹解体実演等、調理も頑張ってくれ大会は大成功!

翌年開催の金沢の3ホテルから下見にいらしたとき、札幌開催の見積や留意点等包み隠さずお伝えしました。

翌年金沢のホテル担当者から、あまりにも札幌のイメージが強く折に触れ「さっぽろでは・・・・」

との例を挙げられ大変です、との私にとって嬉しい連絡も頂きました。

 宴会宿泊計1億9千万円の売り上げは、当時の札幌のホテル業界ではブッチギリ断トツの売上でした。

 

①と②は事前に対策を考えることは出来ませんでした。

③は落としどころを逆算した提案セールスで狙い通りの結果になりました。

私にとってこの経験のおかげでその後料金交渉で困ったことはありませんでした。

 

みな様はキツイ料金交渉の経験はありますか?

出来れば難しい交渉はしたくないですよね。

でも何とか乗り切った時の晴れ晴れとした爽快な気持ちを味わえる案件にめぐり会えるといいですね。

かと言って簡単な打合せ、簡単な料金交渉をあなどってはいけませんよ。

経験上簡単な宴会の打合の手を抜くと思わぬクレームになりかねません。

そういった例をたくさん見てきました。

常に全力で手を抜かず、丁寧に打合せをしてくださいね。

 

今日はこれにて終了、又ね。