世界の盗塁王・福本豊は、通算1065、シーズン106の世界記録を持っている。シーズン100盗塁というと、周東の倍以上という事になり、いかに凄いランナーだったかご理解頂けるだろう。
 
昭和47年オールスター戦の事、その年も走られまくっていた野村は、福本に尋ねる。「なあ福本、お前は俺の肩が弱って来たから、ガンガン走るのか?」福本が答える「違いますがなノムさん、投手が盗まれたら、どんな強肩の捕手でも刺せませんがな。」
 
これにヒントを得た野村は、投手に『小さなモーション』を練習させる。・・・最初は投手陣の抵抗が大きかった。江本などは『そんなん無理です。監督は投手の事が解ってない。』と頑強に抵抗した。
 
野村も負けてない。阪急に勝つには福本の脚を止めないと、絶対に勝てない。・・・説得を続けた結果、一人また一人と『小さなモーション』を練習し始めた。
 
世界初の『クイックモーション』である。
 
翌年、福本の南海戦の盗塁は激減する。昭和48年前期の南海・阪急は、福本対策に成功した南海が勝ち越し、前期優勝を果たした。
 
クイックモーションは、その後、各チームが導入。福本側も更に早いスタートを研究するなど、走者と投手の切磋琢磨が続いていく。そしてこの技術は、海を渡り、今では世界中の投手の常識となってきた。
 
世界の盗塁王・福本と、弱肩・野村が産んだクイックが世界の潮流となったことは、ホークスファンとして、非常に誇らしく思う。。。。