老舗企業の東芝で不適切な会計処理が会社ぐるみで行われたとして、歴代の3人の社長の責任が問われています。
第三者委員会の報告がまとまり報道されました。
短期的な業績を上げるために「チャレンジ」と称する不可能な目標達成のプレッシャーをかけるなどした結果、業績を良く見せるために、翌期の売り上げを前倒ししたり、経費を翌期に先送りするなどの不適切な会計処理をしたとのことです。
また「ストレッチ」と言ってもっと高い要求を部下に求めたということです。
「チャレンジ」や「ストレッチ」は営業が目標達成に向かって見込みを分類するのに使う用語です。
通常は「コミット」、「チャレンジ」、「ストレッチ」の3点セットです。
簡単に説明しますと、
コミット (Commit 約束) : その期に確実に見込める案件や数字
チャレンジ (Challenge 挑戦) : 確実ではないがその期にある程度見込める案件や数字
ストレッチ (Stretch 拡張) : ほとんど期待はできないが条件がそろえばその期に見込める案件や数字
となります。
コミットが目標を上回れば問題はないのですが、そんなことはあまりありません。もしそのようなことがあれば目標が低いのでしょう。
通常は目標はコミット以上、チャレンジ以下といったところです。
したがってチャレンジのうちのいくつかの案件を頑張って達成しないと目標には到達しません。ですからチャレンジというものにプレッシャーが強くかかるのはごく当たり前のことです。
ここで問題なのは管理職や経営層がこのコミットやチャレンジの状況を本当に理解しているかどうかです。
根拠もなくただ「達成しろ!!!」と叫んでいるだけではダメです。なぜその案件がコミットでもなく、ストレッチでもなく、チャレンジなのかがわかっていないから対策を立てられません。
東芝のケースを見ているとこれに全く当てはまると思います。
私が関連会社に営業統括ディレクターとして出向したときに同じ経験をしました。
部下の営業部長たちの今期の売上見込みが一様に目標とほぼ同じ数字なのです。その内訳を問うてみると、まともに答えられず「やります、がんばります」としか言いません。
そして期末になると見込みとは全く違う結果になるのです。
私が着任する以前の状況は東芝と同様で、毎週の会議で見込みが目標より低いと、ただただプレッシャーをかけられるだけだったようです。それで自己防衛として見込みを目標に合わせて報告していたそうです。それで会議はシャンシャンと終ったみたいです。
期末になると達成できません。ここで東芝は不適切な会計処理に手を染めてしまったわけです。私が出向した会社はそこまでひどくはなく、現実を受け入れていました。当然目標未達で叱られるわけですがそれは1回きりです。したがって毎週ギャンギャン言われるよりはましだということです。
東芝のケースではチャレンジという高い目標の達成のプレッシャーが強かったことが悪者のように言われていますが、私に言わせればプレッシャーが強いのは当然のことです。問題はチャレンジの真の意味や状況を社長から末端まで会社全体が理解していなかったことが原因だと思います。ストレッチに至っては何をかいわんやです。
おそらく営業の目標管理についてどこかで聞きかじった言葉を使ってみただけなのでしょう。英語で言うと何となく賢そうに聞こえますしね。
営業を理解している企業や経営者がまだまだいないのだなあとあらためて思いました。
次回はコミット、チャレンジ、ストレッチについてもう少し説明してみます。
営業や管理者、経営者にはぜひ理解しておいて欲しいと思います。