PERTの考え方をもう少し取り入れてみましょう。
またまた料理の譬えです。
お湯を沸かして、材料を切って、それを茹でるという作業の流れを考えてみます。
茹でる時間が5分、お湯が沸くのが2分、材料を切るのには3分かかるとします。
するとまず材料を切り始め、1分後にお湯を沸かし始めます。その2分後にお湯が沸き、材料も切り終わります。そこで5分間茹で始めます。
トータル8分の作業です。
以前にも少し書きましたが、材料を切って、それからお湯を沸かして、そして茹でることをすると10分かかってしまいます。
材料を切ることとお湯を沸かすこととを同時並行処理することによって時間短縮ができます。
この時にお湯を沸かす作業には1分間の余裕があります。しかし材料を切る作業には余裕がありません。材料を切る作業の開始が遅れればそのまま全体が遅れてしまいます。このような余裕のない作業の流れをクリティカル・パス (critical path) と呼びます。
もう少しだけ大きな作業群を考えてみましょう。( )内は所要日数。
A(2) → B(2) → C(1) → G(5)
D(1) → E(1) → F(1) → G(5)
A→B→CとD→E→Fは同時並行できることがわかります。
したがってGを完了するまでの全ての作業時間は10日です。
A→B→CとD→E→Fの二つの作業群を見てみましょう。これらを5日で仕上げることが全体を10日で終える前提です。
D→E→Fは所要日数が3日ですので、余裕が2日あります。
それに対してA→B→Cは所要日数が5日ですので、余裕がありません。
このA→B→Cがクリティカル・パスとなります。
活動スケジュールを遅らせないためにはこのクリティカル・パスを明確にし、それの時間管理を厳密に行うことが重要です。これが遅れれば全体が遅れることになるからです。
計画を立てる時にクリティカル・パスを明確にすることが重要ですが、管理職にとってもこのクリティカル・パスを理解しておくことはさらに重要です。
先程の例に出したAからGまでの作業を10日で行う場合を考えてみましょう。
管理職が1日終わった段階で進捗を確認します。
すると「順調です。予定通りDが終わりました。」
2日終わった段階での報告で、「予定通りEが終わりました。Aについてはやや遅れ気味ですが、大丈夫です。」
このような報告を受けて、「そうか三つの内二つは予定通りで順調だな。Aもこれ以上遅れないように頑張ってくれ。」と言って終わってしまう管理職が多々います。
このままではGまでの作業全体が遅れることになってしまうことに気がついていないのです。
この場合はどうでしょう。
1日終わった時点で、「Aは順調に半分進みましたので明日には完了します。Dはまだ済んでいませんが、明日には完了します。」との報告です。
2日終わった時点で、「Aは予定通り完了しました。Dは予定より1日遅れましたが、完了しました。」
すると管理職は「二つの内予定通りなのが一つだけでは心配だなあ」と言いました。
この二つの例のどちらが深刻でしょうか。
例にあげた管理職は後者の方が深刻と思っているようです。でもそうでしょうか。
実際は前者の方が深刻です。クリティカル・パスに遅れが生じ、もうすでに全体スケジュールが遅れる事態になっているのです。
後者はまだそのような深刻な事態にはなっていません。遅れたのが余裕のある作業の方だからです。
極端な言い方をすれば、管理職はクリティカル・パスの進捗だけを管理していればいいのです。
余裕のある作業とクリティカル・パスを同じ重要度でチェックしようとするから、全ての事にチェックを入れる口うるさい管理者になるか、全てにノーチェックの無責任管理者になってしまうのです。
まじめなだけの管理者は全てをチェックしようとして皆に口うるさいと嫌がられ、本人も多忙を極めます。そしてスケジュール遅れも回避できません。三重苦の管理職ですね。
クリティカル・パスを明確にし、それを重点的に管理するようにしましょう。
クリティカル・パスの進捗管理は作業ごとの完了管理だけではいけません。予定通り完了しなかったのが分かってからでは打つ手がありません。
したがってクリティカル・パスでは作業ごとの開始予定も明確にし、予定通り開始することが重要です。さらにはその作業中も何らかの要因で遅れることがないかを常にチェックしておかなくてはなりません。
追記:
ネットワーク図を描いた方が理解しやすいのですが、ブログに図を描く方法を知りませんので、文章でダラダラと書いてしまいました。
図を描く方法をご存じの方は教えていただけませんか。