まず序盤のお話です。
ゴルフで言えばティーショット、囲碁で言えば布石、そして営業では案件発掘とアプローチです。
前回に書きましたが、ゴルフのティーショットで200メートル飛ばすのに左右10メートルのブレを気にしていてはいけません。スイングが小さくなってしまいます。目先のスコアが気になって必ずアイアンでティーショットをして百数十メートルで満足する人もいます。これでは大成しません。200メートルよりも250メートル、300メートル飛ぶ方が有利なのです。伸び伸びと振りましょう。
状況によってアイアンで打つのはもっと上達してからで十分です。
営業ですと出発点は何を売るかです。
この際にゴルフの例のようにチマチマしていてはいけません。
私はいつも部下に言います。「大風呂敷を広げて夢を売れ!」と。
そのためには商品の特性やお客様の業界や市場の動向などを勉強する必要があります。思いつきの夢ではだめです。ある程度の根拠は必要です。でも大きな夢を語って欲しいのです。
大体大風呂敷を広げても決るときにはだいぶ小さくなってしまうものです。初めから小さい話ではもっと小さくなってしまいます。
お客様の購買性向で「革新のパートナー」の場合は夢は必須です。
「信頼できるサプライヤー」の場合も、他社との差別化、要するに競技ルールを自分に有利にするための準備となります。
「金銭的価値」の場合でも、夢を聞くことは嫌いではないです。
ところがこの序盤で大風呂敷を広げると、お客様より厄介なのが社内です。
私にも経験がありますが、マーケティングイベントの企画を行って予算を取ろうと経理担当役員のところに行きます。そうすると、「これで今年いくら売れる?根拠は?」などと細かいことを根掘り葉掘り詰問してきます。これで多くの営業が萎えてしまいます。
経理畑の人は仕方がありません。序盤、中盤、終盤などありません。常に2メートルのパットを10センチはずしたらどうなるかの心配の発想しか出てこないのですね。
ここで営業の管理職の出番です。営業の管理職が経理と一緒になって営業にクチャクチャ難癖をつけていてはいけません。(もちろん事前に管理職がチェック済みとの前提ですが) 管理職が経理部門などを説得しなくていけません。そのために普段から管理職は経理部門などと密にコミュニケーションをとり、また正確な実績や見込みの報告を行い信頼関係を築きます。そしてこの序盤、中盤、終盤の違いを理解させねばなりません。
次に序盤の力をつけるにはどうするかです。
幸いなことに自分の努力次第でかなりの効果が期待できます。
ゴルフでも囲碁でも技術書が沢山出ています。それを基にゴルフなら打ちっぱなしの練習場で、囲碁なら碁盤に石を並べて身につけます。もちろんプロの指導などが受けられれば最高ですが、練習量は自分の努力次第です。
営業ならば、まず製品や業界や市場についての資料、書籍、雑誌などで情報を取り入れ、将来を見据えた夢を考えましょう。幅広い知識と情報があればある程、立派な大風呂敷を作ることが出来ます。
成功している人が最初にお客様に語った「夢」の例も集めてみてください。
またアプローチについては営業に関する書籍が数多く出ています。その中から自分でもできる、これはと思うものを何度も何度も実践することです。
序盤というのは余白の大きい画用紙を目の前にしているようなものです。
「やらされ感」で仕事をしている人は途方に暮れてしまいがちですが、前向きにとらえてください。自由な発想で仕事を楽しめる瞬間なのです。