一つ目の購買性向は「金銭的価値」です。
分かりやすく言えば、「安いことが大事」ということです。
そんなの当たり前でしょ、と思うかもしれません。しかし、同じ人でも購入するものによって購買性向は異なってきます。
品質が安定していて、どこで買っても、誰から買っても同じ、と思えば価格が最優先の選択理由になります。しかし、嗜好品や贅沢品など、あるいはオプションの多いものなどは単純に価格だけでは選ばないことが多く「信頼できるサプライヤー」や「革新性のあるパートナー」などを重視する場合もあります。
さて、購買性向が「金銭的価値」にあるかどうかを見極めることは非常に重要です。と言うのもこのタイプのお客様は多くの業者、営業から合見積もりをとって検討をされます。したがって営業の訪問、コンタクトをあまり断りません。というか歓迎さえしていただけます。場合によっては相手方からコンタクトがあります。
経験の乏しい営業にとってはとても心地の良いお客様です。そこでどうしてもこのタイプのお客様にエネルギーを掛けがちです。
しかし仮に平均5件の合見積もりをとるとするならば、確率的に見て受注できるのは5分の1です。5件の内4件は受注できません。受注できた1件も非常に低価格だから受注できたわけですから、利益は多くありません。
したがって営業の管理職は営業がこのタイプのお客様に振り回されないように注意しなくてはいけません。
エネルギーを掛けるが、成約率は低く、利益率も低いわけですから。
結局営業は「労多くして、益少なし」となってしまい、モチベーションがさがってしまいますし、営業スキルも伸びません。
また、営業戦略としてこのタイプのお客様に重点を置くと低価格戦略をとらざるを得ません。
新しいビジネスのスタートして低価格戦略をとることは仕方ないことかもしれませんが、継続的に低価格戦略をとるのはいかがなものかと思っています。
構造的に、低価格戦略を続けようとするといずれは人件費の削減にいきあたってしまいます。退職・採用がないとすれば1年で平均年齢は確実に1歳あがります。ということは人件費があがるということです。したがって人件費をおさえようとすれば高齢者の退職、若い人の採用を頻繁に行わなくてはいけない理屈になります。勤続年数の短い、離職率の高い職場ということです。
ブラック企業と呼ばれる企業の多くがこのような構造になってしまっているということをお忘れなく。