藤宮さらです。

いつも、嵐さん、ニノちゃん記事を見に来てくれてありがとうございます。

 

実は私、元小説家(副業)で、アイドルものの小説を出版しておりました。

kindleなどいろんなWEB書店で販売してきたアイドル小説があります。

この度、出版元の扶桑社さんとの契約を修了しましたので、

こちらで公開できることにしました。

 

 

タイトルからして、誰かさんをイメージして書いているのは

お気づきかと思いますてへぺろ

つーか、当時、こんな恋愛映画みたいなのも演じてほしかったなぁと。

12年前の作品になりますが、みなさんに読んでいただきたくて、

年末年始、短期連載をすることにしました。

 

お時間あったら、読んでくださいねウインク

 

 

元カレは小悪魔アイドル

 

キャスト

結衣 高校生時代は読者モデル、現在食品メーカーの社長秘書

ハルキ アイドルグループ『AGE』のメンバー

 

ミカ 高校生時代、結衣のモデル仲間

 

 

10年ぶりの再会

わたしは、社長のお供で、コマーシャル撮影のスタジオにきていた。

2階をぶちぬいたような大きな倉庫みたいな空間に、セットが組まれている。
大勢のスタッフが、撮影の準備に追われていた。
今日はここで、自社の新商品のコマーシャルの撮影をする。

わたしは、大手食品メーカーに勤務しているOL。

社長室に配属され、社長秘書をしている。
社長のスケジュール管理や、どこにでもお供してサポートするのが仕事だ。

今日の撮影は、冬に発売するいちおしのカップスープ。
しょうが仕立てで、冷え性のOLをターゲットにしている。

オフィスで飲んでもらうのを想定して、オフィスのようにセットが組まれていた。
制服姿のOL役のモデルが、数名、ひざかけをしてスタンバイしている。


その時、後方のドアが開いた。

「『AGE』のハルキさん、入ります!」

その声に、みんなが一斉に振り向く。

そう、CMのメインタレントは、人気絶頂のアイドルグループ「AGE」のハルキだった。

宣伝部としては、グループで起用したかったけど、

ギャラが数倍になり、競合他社の契約など、大人の事情で使えない。

そして、彼がピンで起用された。

ハルキの周りを一斉に関係者が取り囲む。

広告代理店の営業に促されて、ハルキがわたしたちクライアントのところにやって来る。

ハルキ目当ての宣伝部の女の子たちが、
「きゃあ! ハルキよ。本物、超かわいい」
と目立たないように、小声で色めき立っていた。

わたしたちが紹介されると、

「よろしくお願いします」
と、ハルキは社長に向かってあいさつをした。

顔を上げた瞬間、社長の隣にいたわたしに目をとめた。

たった、数秒だったと思う。

ハルキとみつめあった。

彼は、わたしのことを気付いたのだろうか。

そんなはずはない・・・。
もう、ずっと昔のことだから・・・。

ハルキの記憶に留まるような、存在にはなれなかったはず。


切なかったあの頃


まだ、高校生だったあの頃、わたしはハルキに恋をしていた。

その頃、わたしはティーン雑誌の専属モデルをしていた。

表誌を飾ることがあっても、5人並びで。
モデルとしては、たいした知名度もなく、月に一度、専属雑誌のページに載るだけだった。

元々、この世界に入りたかったわけではない。
たまたま、街でスカウトされて、雑誌の仕事をもらった。

あの頃は、すべて受身の、すべて流されるだけの毎日だった。

わたしはあるパーティで、ハルキに出会った。

ハルキはまだデビュー前で、先輩たちのバックで踊っていた頃だ。

同じモデル事務所のミカに、
アイドルの卵やモデル仲間が集まるパーティがあるからと、有無を言わさず、連れてこられたのだ。

西麻布のある某クラブを借り切ったフロアで。

スタイルだけは、完璧にキメた男女が集まって、揺れていた。
でも、そこには知っている顔はなく、売れないメジャー予備たち。

そんな中で、ハルキは明らかに目立っていた。

外見だけ整った2D対応(平面グラビア)の長身のイケメンモデルたちの中で、

生き生きした3D対応(俳優)の魅力を放っていた。

どれだけ、知り合いがいるんだと思うくらい、人懐っこく、だれにでも愛想を振りまいていた。
そして、だれからも、かまわれて。

人との距離感が近くて、フレンドリーなくせに、どこか冷めた眼差しをしている。

わたしには、とても不思議な存在に思えた。

そんなハルキが、わたしとミカのテーブルにやって来た。

「彼女、ニューフェースじゃね?」

ミカにわたしのことを聞く。

「そうなの。奥手な子だから、色々教えてやって」


ミカはハルキに目配せをし、ドリンクを取りに行くと言って席をたった。

ポツンと一人残されたわたしのすぐ横に、ハルキがストンと座る。

「おれ、ハルキ。君、なんていうの?」

初対面なのに、ずっと知り合いだったような距離感で話しかけてくる。

わたしはびっくりして、彼のそばから離れた。

「ホント、奥手ってゆーか、こんなトコ苦手って感じだよね」

 ハルキはわたしの顔を覗き込む。

「あなたは好きなの」

「えっ?」

 ハルキは、意外そうな顔をした。

「ちっとも楽しそうじゃない。
 顔は笑ってるのに、なんで、そんな冷めた目をしてるの」


「・・・」

一瞬、彼の顔が真顔になる。

「知りたい?」

もう、いつもの人懐っこい顔にもどっている。

「教えてやるから、こっち来いよ」

ハルキはわたしの手をつかんで引っ張っていく。

「えっ、何。どこ行くの」

わたしは、クラブの奥の個室に、連れて行かれた。

二人掛けのラブソファとテーブルしかない、小さい空間。

わたしを座らせるなり、ハルキは、強引にキスをしてくる。

「イヤッ」

わたしは、顔をそむけて、ハルキの胸を押しかえした。

「なんだよ、おれのこと知りたいんだろ。誘っときながら、今さら気取るなよ」


「わたし、そんなんじゃない・・」

どうして、あんな言葉で誘ってることになるのか、訳がわからない。

「そっか・・・。
 ミカにハメられたのか」

「えっ?」

 どういうこと・・・・?

「おれ、ヤリたがってる女を、紹介されたつもりだったけど」

「うそっ」

わたしは絶句していた。

なんで、ミカにそんなことをされるんだろう。

彼女とは、撮影で顔を合わせるだけで、あまり話したこともなかった。

なのに、メンバーが足らないからと、無理やり誘われたのだ。
確かに、不自然な出来事で。

「君ってさ、女の嫉妬を買うタイプだよな」

「わたしが? どうして?」

わたしには、彼の言葉の意味が全くわからない。

「教えてあげるから、スマホ貸して」

ハルキは、ほほ笑みながら、手のひらを差し出す。

 スマホで何がわかるんだろう?

 わたしは、スマホをハルキに渡した。

「ほらね。
 こういう人を疑わないとことか・・・」

ハルキは、わたしのスマホを覗き込み、勝手に操作する。

「ちょっとっ、何するの?」

わたしはさすがに焦る。

「結衣ちゃんね。
 おれの入れといたから、よかったら電話して。
 今度、教えてあげるから」

瞳をキラキラさせて、アイドルスマイルを向ける。

「でも、おれでよかったね。
 他のヤツなら、無理やり、ヤラれてたかもよ」

「うそっ」

「だって、ここ、そういう集まりだから。
 早く帰った方がいいよ。
 誰かに食べられちゃう前に」
 

 


続く