「いらっしゃいませぇ~・・・(-^□^-)」 いつものように、浮かない顔の男たちが入っては・・・ 目をギラギラさせながら女の子選び。 そして、 壮快になって帰っていく男たちの後ろ姿。 ・・・・繰り返し眺めながら受付をしていた。 営業終了後、いつものように私は、女の子にお給料の支払いをしていた。 女の子はこの日、接客したお客さんのことや、他愛もない話を私に聞かせてくれる。 この日、もみじちゃんはラストに接客したお客さんとの50分コースを20分もオーバーして出てきた。 「オーバーして本当にすみませんでした。」 もみじちゃんは過剰サービスで、コースの時間を超過することは珍しくなかったが、この日の彼女は少しおかしかった。 事情を聞くことに。 「ダメですよ。時間内にサービスを終えないと・・・なにかあったんですかぁ???」 「実は、最後のお客さん・・・アレがかぶってて、凄く臭ったんです( ̄_ ̄ i)。 『へルスに来たら剥いてくれると聞いたから・・・剥いて欲しい』 とお願いされたんです・・・何回も石鹸つけて・・・痛がってたから時間がかかってしまって・・・・。 でも、要望どおり、剥いてあげましたo(〃^▽^〃)o!!」 と。 彼女は、喜んでいた。 もみじちゃん、かなりのテクを持っているよう。 |
もみじちゃん・・・
私より、5つ年上のお姉さん。
私が、受付に入る半年前にお店に入店している。
彼女は、おやじの指名客が多く、サービスは濃厚でディープ。しかも、お客さんから、シチュエーションを要求された役に対して、なりきり度MAXで応える超過激でエロイ女の子。
外見も、悪くない。鼻筋が通っており顎もシャープで、浜崎あゆみを少し外人にしたような感じ。体系は普通より、少しぽっちゃり目。もう少し痩せたらもっと綺麗だろうな・・・。
ちょくちょく遅刻をする女の子ではあった。
今日に限って、連絡がない。BOYが家まで様子を伺いに行くことになったが、家には居らず、携帯電話に電話しても取り次がないという。
・・・・結局、この日は来なかった。
次の日、「すみません・・・・」と。
その後は、分かりきった、言い訳をつらつらと必死に発していた。とりあえず、無断欠勤ペナルティーとして、給料から5000円引き、このようなことがないように厳重注意。
・・・・どうやら、旦那と別れるための裁判をしているようだ。もみじちゃんは別れたいが、旦那が別れたくないと。
旦那は、医者をしており「俺が働くから働かなくていいよ。君は、ずっと家で僕の帰りを待っていればいいんだから。」
と、束縛の激しい旦那。
もみじちゃんは、「知り合いのスナックで人手が足りないから手伝いをしている」と旦那には言い、お店に出勤していた。
前に、お店に出勤するまで跡を付けて来られ、それから束縛が激しくなったとか。
しかし、医者と結婚していてなぜ、お金に困っているのか不思議だった。
BOYに聞くと、ホストにはまっていて、借金が300万程あるとか・・・。遅刻したり、無断欠勤が多いのはそれが原因とか。
確かに、彼女は若いお客さんが付くと、ものすごく喜んでいた。私の母と同じ匂いが少しだけした。
3ヶ月位がたった。
もみじちゃんは、日に日に太り、制服であるチャイナ服が入らなくなっていた。・・・・特大の15号がピッチピチに。
座ると、おなかの段々にチャイナドレスが食い込んで・・・
哀れな姿に。
「私や痩せなきゃ・・・」
と言いながら、焼そばユーフォーの特大を食べている。
・・・・チーンという音が聞こえたような気がした。
その後、彼女が痩せることはなかった。
指名客が減っていった。
後姿が、トドのように見えた。
私が辞める日「辞めないで下さい」と彼女はおお泣きし、菓子折りをくれた。
旦那とは、決着が付いたらしく、表情も明るくなっていた。
今も彼女はお店に居るとか。
しかし、ホストからは抜けれず、未だに無断欠勤を繰り返しているらしい。
多重人格娘・・・・
その子は、街路樹が緑から茶褐色に変わる頃、お店に入店してきた。
名前は「あみか」。
休憩室を覗くと彼女が斜め下を見て、肩を窄めてちょこんと座っていた。緊張しているようだ。
彼女は、色白で、髪は、深い黒色をした小柄の華奢な純日本人のような雰囲気があり、物静かで、小鳥が囀るようにか細く話す印象だった。
ただ、若干何か内に秘めている黒い影のようなものも感じたので近寄りがたかった。
数日が経ち、あみかはお店に慣れたのか、表情は明るくなり、笑顔を見せるようになった。
ある日、出勤してすぐに接客する自分の部屋に篭ったまま出てこなくなった。部屋に電話をしても応答がない。
BOYが様子を伺いに部屋を覗くと、あみかはうつ伏せに倒れていた。
呼吸が引きつっている。
・・・・過呼吸だ。
急いで袋を口に当て、呼吸を整えた。
あみかは、何かに興奮していたようだ。
お店の閉店後、2時間が経ち、ようやく部屋から出て来た彼女の表情は、青白く引きつっていた。
お給料支給のとき、私の横に気配もなくあみかは立っていた。
「お給料下さい。」
と、下を向いたままあみかは言った。
「はい。お疲れ様です。ここにサインしてください。
・・・・・大丈夫ですかぁ?顔が青白くなってますよ・・・」
と、声をかけると・・・
「はい。大丈夫です。」
「って言うか、旦那がいつも遊ぶから私がこうやって働かなちゃいけないんですよ。なんで私ばっかり・・・でも、あいつ私がいないとダメ人間なんですよぁ!ざまぁみろって感じ!!」
これがあみかの正体なのか、と疑うくらいものすごい形相で、堰を切ったかのように醜い感情が溢れ出していた。
「あみかさん結婚されてるんですか?」
「はい。結婚しちゃったんですよ・・・今更、後悔しても遅いかもですが、あんなやつのどこが良かったのかと思う位・・・
いっそのこと保険をかけて、殺してしまおうかと思ってるんですよ」
と言いながら高らかに笑う彼女は不気味で、背筋に冷気が走った。
関りたくなかった。
「・・・・お疲れ様でした。」
としか言葉が出てこなかった。
あみかを看病したBOYに、彼女の事情を聞くことに。
彼女の旦那は亭主関白の強い、ダメ男。
借金が600万あるのを2年で300万、彼女一人で返済しているらしい。
しかし、旦那は、毎日ギャンブルしては酒を飲んで暴力を振るう・・・
暴力を振るった後は、すごく優しいらしく、その優しさと、
「自分がいないとこの人は生きていけないんだわ」
という優越感で、保っているとか。
もともと彼女は「悲劇のヒロインの自分が好き」らしい。
数日ご、お給料支給のとき、
「何でそこまで頑張るんですか?」
と尋ねた。
「男に体を売ることは苦じゃない・・・
だって大人しくしていれば、終わることでしょ?
感情とかいらないし、気持ちいいもんでもないじゃないですかぁ。
旦那とも気持ちよくないのに。何かが入ってきたな・・・ぐらいでしょ。
気持ち悪いって思ったら、頭の中を真っ白にするの。
そうしたら何も感じなくなるから。
それでお金がもらえるからお得じゃないですかぁ!!」
・・・・言葉が出なかった。
と言うより、彼女が理解できなかった。
・・・・・・・・・・・・・・そんな考えを持つ人もいるんだなぁ・・・・と。
半年が経ち、彼女の中に棲んでいる何人かの住人に会うことができた。
大半は背筋が凍るような人・・・・
「同性愛のあみか」
「自虐心の強いあみか」
「傲慢なあみか」
「無心のあみか」・・・・・
ある日、あみかが出勤して来なかったので、BOYに事情を聞いた。
「今、警察でと取り調べを受けているから、21時過ぎになるらしい。
どうやら、黒服に追われていた男の子を匿っていたとか。
その男の子が朝方、橋から落ちてなくなったらしい。お酒も飲まずに・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
営業後、あみかにお給料支給した。
事情聴取後、彼女は何もなかったかのような表情で出勤してきたので逆に怖かった。
「事情聴取、どうでした?」
「特になにもありませんでしたよ。
っていうか、あの男がいけないんですよ!
折角、匿ってやってんのに、私に口答えするから・・・だから、その子の情報を10万で売ったんです。
そしたら、橋から落ちて死んでるでしょぉ!!面白くないですかぁ~」
・・・・・・・・苦笑いするしか出来なかった。
今はどうしているのか分からないが、彼女の中の住人は変わらないだろう。