映画「あなたへ」を観てきました![]()
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齢80歳になる高倉健さんの、もしかしたら最後の作品かもと
NHKのドキュメンタリーを観た時から「これは観ておこう」と思っていました。
私は所謂「健さん世代」ではないので、網走番外地も昭和残侠伝も観ておりません。
孤高の俳優・高倉健の映画といえば「駅 STATION」とか「幸せの黄色いハンカチ」とかで
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ほとんどミーハーな観客です。
「あなたへ」は亡き妻の遺言に従って、妻の故郷の海へ散骨に行くお話です。
健さんの妻は田中祐子さん。
元童謡歌手と言う設定で、健さんが刑務官を勤めている刑務所に慰問に行き
健さんに見初められ夫婦になり、15年後に悪性リンパ腫で他界する役でした。
妻の過去は劇中でいっさい語られることがなく、ただ流れる時間の中で回想という形で
挿入され、その糸を観客が自分の中で結んでいくようなものでした。
富山から長崎までの長距離ドライブの中で、いろいろな人と健さんは関わっていくのですが
その人たちの背景も、さらっと触れる程度でしか語られず
「想像して下さい」と言われているようでした。
北野たけしが元中学教師と言う触れ込みの、実は車上狙いと言うクセモノを
味わい深く演じていました。
種田山頭火の「放浪」と「旅」の違いの定義はなるほどと思いました。
目的があるのが「旅」または帰るところがあるのが「旅」
これがどうやらこの映画の軸になってるのではないかと、私は思います。
長塚京三、佐藤浩市、余貴美子、綾瀬はるか、草なぎ剛、原田美恵子
演技巧者の俳優さんたちが、がっちり脇を固めている中で
この作品が遺作となってしまった大滝秀治さんが、年老いた漁師をリアルに演じていらっしゃいました。
ドキュメンタリーの中で健さんが「大滝さんの台詞にぐっときて涙がこぼれた」と言うような話をされていました。
その台詞もウッカリすると聞き逃してしまいそうなほど、自然でさらっとしたものでした。
名優の名台詞って本当に自然なんですね。
二時間弱のたいした盛り上がりもない作品ですが、とても上質な織物のような
柔かく肌さわりの良い「佳作」と言うのでしょう。
見終わった後に「いい映画だったなぁ」と思える一本でした。