萩尾望都様が自身のエッセイの中で、この作品を世に出すまでの話を面白く書いていらした。


当時の編集さんが「ベルバラ」の向うを張って、長編大河ドラマをやろうと持ちかけたので


ちょうどこつこつと趣味で書き溜めていた「トーマの心臓」を、彼女自身のはじめての


長期連載として発表することになったらしい。


週刊連載が初めての上、暗くて地味で趣味的(ドイツのギムナジュウムが舞台)なので


読者に受け入れられるのかと心配していたようだ。


いざ連載が始まると、案の定アンケート結果は悪かった。


その上連載をたき付けた件の編集さんが編集長に昇格し、とにかく読者に受ける作品を


描いて欲しいので「トーマの心臓」は打ち切りたいと言い出した。


酷い話だよね、まったくヽ(`Д´)ノ


望都様はその時この話の表題にもなっているように「しなやかに、したたかに」編集と交渉を繰り返し


人気のある「ポーの一族」を描く事をえさに、あと少し、もうちょっとで終るからと33回の連載を


描ききったと述べていらっしゃる。


今では舞台化までされた名作「トーマの心臓」も発表当時は受けなかったんだな。


確かに思春期の男の子同士の恋愛感情を軸にした精神性の高い話だから


読者年齢から見ても感情移入しにくい作品である事は否めない。


ただこの歳になって読み返してみると「やばい!面白すぎる」と言える作品なのです。


人を愛する事、許す事、受け入れる事、思春期独特の自我の目覚めと自己否定。


当時の自分がこの作品を何処まで理解してたのかが解らなくて口惜しい。


読書ノートでも残しておけば良かったなo(TωT )


トーマの心臓 (小学館文庫)/萩尾 望都
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