甲斐さんがソイラテを持ってきてくれて。

俺が3匹と戯れてるのを見た甲斐さんは少し柔らかい表情をしてた。



「すっかり櫻井くんに懐いてるな」
「にゃ♪」
「うん♪」
「なぉ」



相変わらずチビは喋ってるみたいに鳴くし、本当に返事してるみたいだなって笑ってる俺を見ていた甲斐さんは、少し考える顔をして俺に提案をしてきた。



「櫻井くん。少しバイトを頼めるかな?」
「……バイト?」
「キャルは分別あるから無断で店から外へ出る事をしないが、チビは隙をみて外へ探検に行きたがるんだ。今日もそうだった」
「うにゃ♡」



甲斐さんがチビに向かって苦笑すると、チビはそ知らぬ顔で俺の指を甘噛してた。

これだけ活発ならそうかもなって思いつつ、何で俺にバイトを?って甲斐さんに視線を向けたら、続けてこう言った。



「チビは頻繁には店に来ない。だからチビが来た時だけで構わない。逃走防止で面倒をみてくれないか?」
「……でも…」
「バイトと言っても、ここで自由に飲食してチビを構ってくれれば良いだけの簡単な事だから頼めないか?これだけ懐いてる櫻井くんが居れば勝手に外へ出ないと思うから」



甲斐さんが真剣な顔でそう言うから俺は少し考えた。でも、確かにチビは活発だし仮に外で事故に遭ったら……って考えた瞬間に俺の頭にあの日が甦った。



あの日の雅紀とチビの事が重なって……もしも事故でチビが居なくなったらって…想像するのも嫌だった。



俺は思わずチビを抱き締めて俯いた。そして考える間もなく甲斐さんに答えた。



「バイト…引き受けます」
「ありがとう。チビが来る日が分かったら櫻井くんに連絡してお願いするよ」
「分かりました……」



こんなのはバイトだとはいえないかもしれないけど、これをきっかけにして俺は少しだけ自分以外に関わる時間を持ち始めた。