「みゃ~♪」



カフェの中に1歩入ると同時に鳴き声がして猫が俺の足元にすり寄ってきた。

チビとよく似た茶トラ柄。

さっき甲斐さんが言ってたチビの父親かな?



「にゃ♪ん~なぁ♡」



ものすごく人懐っこいソイツは、俺の足にスリスリと体をまとわりつかせてゴロゴロと喉を鳴らしてた。



……何か…コイツも可愛い……



俺が歩くのに合わせてずっとくっついてくるから、そのまま一緒に席まで移動した。



「櫻井くん、好きなもの注文して?」
「えっと……ソイラテ………」
「了解。出来るまでチビとキャルの相手しててくれると助かる。シロンも」



俺が席に座ると甲斐さんが何を飲むか聞いてくれて、気が付けば俺はそのまま3匹の猫に囲まれてた。



「なぉ♡」
「ぴゃ♪にゃ~お♡」
「にゃあ♪」



座ったのがボックス席で、ジャンプすれば椅子に届くからか茶トラ柄の猫は椅子に飛び乗ってきて俺にめっちゃスリスリしてくるし、チビは俺に抱っこされたまま御機嫌だし、白猫は遠慮気味に茶トラ柄の横でおすわりしてた。



「ふふっ…何だよ……そんな一斉に俺を歓迎してくれんの?」
「うん♪」
「……チビ………マジ喋れんの?」
「うん♪」
「ふははwタイミング良すぎだって」



こんなに笑ったの…いつ振りだろ。

俺は雅紀が居なくなってから笑うなんて事、忘れてたよ。

確か茶トラ柄の猫が父親で『キャル』で白猫が母親で『シロン』だっけ?

俺は思う存分3匹を撫でて戯れてた。



「チビはキャルとシロンの両方に似てるな。うまいことキャルの茶トラ柄にシロンの白色が足先になってる……瞳はシロン似?」
「うん♪」
「ふははw返事のタイミング良すぎw」
「みゃ♡」



こんなに笑ったのも、こんなに喋ったのも久しぶりだなって……

ちょっとだけ、心が軽くなって気持ちが晴れた気がした。