物陰に隠れたまま動けなくて、俺はさっきのしょーちゃんの姿が頭から離れなかった。

あんなに優しげな表情は……『雅紀』に向けられてたのを見て以来、久しぶりな気がする。



………俺は『雅紀』には敵わない。なのに強敵はどんどん増えるのかな?



片想いって……こんなに苦しいんだ。



今にも泣きそうで、でも泣いたら戻った時におーちゃんと和くんに説明出来ない。

俺はぐっと唇を噛み締めて正面を向くと、勢いよく自分の頬っぺたを両手で叩いた。



「今はまだダメ!泣くなら…しょーちゃんにちゃんと告って当たって砕けてから!」



自分に気合いを入れ直して、俺は歩いて来た道を逆戻りして、おーちゃん家に戻った。

ちょっとだけ迷子になりかけたけど何とか辿り着けて、恐る恐る玄関のベルを鳴らしたら和くんが玄関から飛び出してきた。



「もう!まーくん!!どこ行ってたのさ!」
「ごっ、ごめん……何かおーちゃんの知り合いの人の名前噛んだら恥ずかしくなっちゃってさ?逃げちゃった」
「………そういう事にしておきます」
「………ホントだよ?」



俺の姿を確認すると和くんは心配と怒りが混じった感じで俺に掴みかかってきた。

それに対して俺が捲し立てるように言い訳すると、和くんは静かに俺の表情をうかがいながらそう言うから……俺は無理やり笑ってそう返事した。

結局、クリパらしい雰囲気には程遠かったけどケーキを食べたり飲み食いして、俺と和くんはおーちゃん家から帰った。

帰り道、ずっと和くんは何かを言いたそうにしてたけど何も言わずにいてくれて、俺もその何かに触れられないように関係のない話をし続けて。





少しほろ苦いクリスマスの思い出は、俺の心の奥でずっとチクチクしてた。

でも……同時に必ず大学受かってここに来るって俺は決意したんだ。