(翔)



夏休みに俺が倒れてから、智くんが俺に対して過保護になった気がする。

でも決して押しつけがましい訳じゃなくて、にこにこ笑って俺を昼食に誘ったり、コーポで自分の分を多く作りすぎたからって食べさせてくれたり。

甲斐さんも、夏休みが終わって授業が始まったら、さりげなく俺に弁当を作ってくれるようになったし。

馴れ合わず距離を取るつもりでいるのに、どんどん家族みたいになってきて、でもそれが居心地がいいって思ってしまって………



駄目だ。早くここを出ないと。

俺は幸せにならない。なっちゃいけない。

俺には、ここに居る資格がない ───



何とかしてバイトを探さないと、何とかして別の住居を見つけないとって気持ちは焦ってたけど、ずるずると時間は過ぎて迎えた冬。

やっぱり年末年始も実家に帰る気にはなれなくて……。

何処から手に入れたのか、智くんが半纏を自分だけじゃなくて俺にもくれて。

共用のリビングにはコタツと蜜柑。

どんどんと沼にハマってる気がするのは気のせいだろうかって………

そんなある日、智くんが甲斐さんと話をする声が聞こえた。



「甲斐~、今度の週末にカズとまーくん呼んでクリスマスパーティーすっけど良いか?」
「……あまり大騒ぎするなよ?」
「おー」



智くんと甲斐さんの会話に、俺は一瞬であの日に見かけた姿が頭をよぎった。



雅紀だけど雅紀じゃない。

雅紀と同じ姿をしたあの人物……



智くんの幼馴染みって言ってた。でも何で急にここでクリスマスパーティーなんかするんだろうって不思議に思って、思わず智くんに声をかけた。



「智くん?クリスマスパーティーって……?」
「お?クリスマスイヴがまーくんの誕生日なんだよ。だからカズはまーくんの誕生日パーティーはしてもクリスマスパーティーはしねぇって言うから、今年はオイラがクリスマスパーティー担当することにした。カズはカズで別の日にまーくんの誕生日パーティーやるんだと」



普段はそんなに長く喋らない智くんにしては饒舌に、そんな話をした。

でも、俺はその話の途中で内容が頭に入らなくなった。



………クリスマスイヴが誕生日?雅紀と同じ?



嘘だろ……?