(潤)



夏休み。大学だって夏休みのはずなのに、翔さんは帰ってこない。

それとなく母親にその話題を振ったら、翔さんのお母さんともそういう話題になったって言ってた。



「翔くん、こっちに帰るのもお金かかるから帰らないって言ってるみたいよ?」
「そう……なんだ」
「相葉さんのところも引っ越しされたし、ここも寂しくなったわね」
「……え?」



そういえば、まぁ の事故があってから全然見かけなかった気がする。まぁの両親……。



「相葉さんもお気の毒よね……産まれたばかりの時にもお子さんが亡くなって、そのうえ雅紀くんまでもだもの」
「母さん?」
「潤は知らないかもしれないわね。雅紀くんは双子だったのよ。でも産まれてすぐくらいにひとり亡くなって……」
「どうして母さんがそんな事知ってるの?」
「潤が産まれる前までは産婦人科に勤務してたのよ。その時にね」



母さんは看護師。

まぁが亡くなった時にも勤務してた。

そういえば まぁ が親と一緒に墓参りに行くことがよくあったのも何となく覚えてる。あれって自分の兄弟の墓参りだったのか……



「直前まで元気だったのに……乳幼児突然死症候群だったから前兆が無くて突然。奥さんが取り乱して大変だったもの。でもここに引っ越してきて再会したら雅紀くんが元気に育ってて安心して……なのにあの事故でだなんて」
「……そうなんだ」
「でもね……旦那さん、ちょっと問題ある人だったみたいで……元々揉めてたみたいなんだけど雅紀くんが亡くなって、それが決定打で離婚したみたいなのよ」
「?!」
「だから引っ越ししたらしいの」



そんなこと全然知らなかった。

親同士はそういう話題も世間話でしてても俺は興味無くて聞いたことないし。



………まぁ は自分の親が揉めてるなんて一言も言わなかったし、そんなこと感じさせなかったから。



翔さんは知ってたのかな?

まぁ が抱えてた色々なことを。