それは、夢の中の俺としょーちゃんが事故にあう夢。



たかが夢。今まではそう思ってたのに。

それは実際に起こった事故だった。



その事故は新聞やニュースで取り上げられて俺の住む場所でも流れた。

最初は、たまたまとか偶然とか気のせいだと思いたかった。

でも、その事故で被害にあった人物の名前が『相葉雅紀』で、俺と学年が同じだとか、もうひとり怪我人がいるとか、俺が夢で見たのと同じ状況とか………



──── あれは夢じゃなかったの?



奇妙なことにその事故の日を境にして、俺がしょーちゃんの夢を見ることがなくなった。

もうこれは偶然だなんて思えなくて、どうしてなのかって考えても分からなくて。



そんな時、俺はお父さんとお母さんから改まって話があると言われた。

テーブルの前にお父さんとお母さんが並んで座って、その前に俺が座って。

テーブルの上には、手紙が置かれてた。



「本当はもう少し先、雅紀が成人した時にと思っていたんだ」
「私達が雅紀を引き取った時に預かった手紙があるの。それは雅紀の本当のお母さんが書いた手紙よ」



聞けば、お父さんとお母さんもあの事故のニュースを見てたらしい。手紙は俺宛だから勝手に読む事は出来ないし、だから内容に何が書かれているのか分からないけど、俺が手紙を読む前にもしもの事が起きたら、母親が伝えようとしている事を、母親の俺への気持ちを知る前に何かがあったらいけないと思ったらしい。

たまたま学年が同じで名前が同じなだけ。だけど他人事とは思えなかったって。

手紙の存在は昔おばちゃんから聞いてたし、この手紙を渡される事に驚いたりはしなかったけど、何故か胸が騒いで……



俺はその手紙を、お父さんとお母さんの前では読まずに自分の部屋で読んだ。