俺の覚えてる一番古い記憶は5歳の頃。
その頃はまだ俺の名字は『相葉』じゃなくて『今井』だった。
シングルマザーで必死に俺を育ててくれた母親と六畳のアパートで2人暮らし。大切にされて愛情を注がれて育ててもらってた。
母親から詳しい身の上を聞かされる年齢でもなかったから知らなかったけど、母親は他に身寄りが居ないらしくて、俺の父親の事も口を閉ざしてた。
そんな中で女手ひとつで子供を育てるのはやっぱり大変だから、母親は一日中働いてた気がする。でもそれが、無理がたたって病気になってしまったんだ。
「雅紀……おうちに帰れなくてごめんね……」
ギリギリまで無理してたから手遅れで、入院はしたけど手の施しようがなくて。
あっけなく……俺はひとりぼっちになってしまったんだ。
母親が入院してからはアパートの隣に住んでたおばちゃんに面倒を見てもらってたけど、それにも限界がある。
この先俺の事をどうしようかって、母親とおばちゃんが前もって話をしていたのは何となく知ってたけど、結局俺は児童養護施設に行く事になった。
「ごめんね雅紀くん。おばちゃんも自分の事で精一杯なの……」
「ううん、おばちゃんありがとう」
「これは美樹ちゃんから預かった雅紀くん宛の手紙なの。でも雅紀くんがもう少し大きくなってから渡して欲しいってお願いされたから養護施設の人に渡しておくね?」
「うん、わかった」
少しの荷物と手紙。
それだけを持って俺は施設の人とアパートを後にした。
その後、運が良かったのかすぐに俺を養子に迎え入れたいって人が現れて。
その人の名字は『相葉』だった。
俺は『今井雅紀』から『相葉雅紀』になったんだ。
新しいお父さんとお母さんは本当に良い人で自分達に子供が出来なかったからって俺を引き取ってくれて、本当の自分達の子供のように接してくれたから、俺も本当のお父さんとお母さんだと思って過ごしてる。それは今でも。
おーちゃんと和くんに出会ったのも、お父さんとお母さんの元に来てから。
朝から晩まで3人で遊んでた。