営業中に迷惑をかけた御詫びと、部屋で休ませてもらった御礼を琥珀さんに言うと、俺はコーポへ帰ろうとした。



「ここからコーポまで近いとはいえ、さっき倒れたばかりで心配だから、甲斐と一緒に帰ったほうが良い。店のほうは大丈夫。萌葱が手伝ってくれるよ」
「……琥珀が言えば萌葱は喜んで手伝うから櫻井くんは気にしなくていい汗
「……はい」



少し苦笑気味の甲斐さんの態度に、本当にそれで良いのか?って頭をよぎったけど、琥珀さんと甲斐さんの御厚意を素直に受け取って俺は甲斐さんと一緒にコーポへ帰った。

甲斐さんは元々あまり口数の多い人ではないけど、帰る間も俺を気遣ってゆっくり歩いてくれてるすごく優しい人。



コーポのみんなもさっきの琥珀さんも、何で俺なんかに優しく接してくれるんだろう……。



段々とここが俺にとって居心地のいい場所になり始めてて、少し戸惑ってる。

そんな事を思いながらコーポへ帰り着いて玄関に入った途端、智くんが俺に向かって突進してきた。



「うわっあせる
「翔くん大丈夫かっ?!いきなり倒れたからビックリしたぞ!やっぱりもっと飯食ったほうがいいんじゃねぇか?」
「あ、の……心配かけてゴメン………」
「サト……汗櫻井くんが困ってるからそこから退いてやれ汗
「あぁ、わりぃ」



智くんが俺に掴みかからんばかりの勢いで真正面に立ってるから、甲斐さんがそう言って智くんを退かせてくれた。



「そういえばカフェに来たサトの知り合いの子達は?」
「さっきまでいたけど帰った」



甲斐さんと智くんの会話を聞いて、カフェでの事とさっきの夢を思い出して……

あれは何だったんだろう。



「智くん……さっきの子達は……?友達?」
「お?カズは俺の恋人。二宮和也っての」
「っっっ?!こ、こい…びと?」
「んで、まーくんはオイラとカズの幼馴染みの相葉雅紀って、受験する大学のオープンキャンパスに来てたんだと」
「えっ……」



智くんの言葉は、俺の予想を遥かに超えるものだった。

恋人ってのも驚きだけど、そこじゃない。

さっきの子の名前が『相葉雅紀』で今度大学受験……俺の1つ下?





雅紀だけど雅紀じゃない。
……あいつは何者?