入居予定だったアパートの大家さんと話し合いが出来て、ここのコーポのオーナーさんとも話し合いが出来て、正式に賃貸契約は完了したらしい。

全部親父に任せたから詳しい事は分からないけど、さっき出会ったここのオーナーさんが間に入ってくれたからスムーズに解決したって親父が言ってた。

親父は俺を心配しながらも、手続きが済んだあとで不足する家財道具を買い足したのを見届けると、遅くなると次の日の出勤に響くからと大急ぎで帰っていった。

親父を見送ったあと、共用のリビングに集まって住人との初顔合わせをした。

俺がお世話になるこのコーポの住人は、住み込みで働く管理人さん。それともうひとり若い男性が居た。



「自己紹介をしておきましょう。私は『コーポ 青波』のオーナーをしている 大野 萌葱。ここには住んでいませんが近くに住んでいますので何かあれば言って下さいね」



オーナーさんは、優しそうなおじいさんというか少しの年配の人。そういう言って柔らかい笑顔で挨拶をしてくれた。



「俺は 大野 甲斐。オーナーと名字が同じだけどオーナーからここの管理人を任されてるだけだから変に意識しないでくれればいい」
「甲斐は私の遠縁の親戚ですよ」
「………遠縁汗……遠縁だから気にせず気楽に接して欲しい汗



管理人さんは、俺よりは年上に見えるけど若い男性。耳にピアスをしてて、茶色の髪をしていてカラコンなのか深い蒼色の目をしてる。

オーナーの言葉に何故か不思議な反応をしているのが気になるけど……あまり深く関わるつもりはないから受け流した。



「オイラは 大野智。モーさんとは名字が同じだけどオイラは親戚でもなんでもない」
「サトくんは、『3104』を凌ぐかもしれない将来有望な画家なんですよ。私は画商もしてまして、そちらで御縁があったんです」
「モーさんがここで好きなだけ絵を描かせてやるってアトリエ代わりに部屋を貸してくれてんだ」
「サトは描き始めると寝食忘れるから、俺が朝夕の食事を用意してる。だから櫻井くんの食事もこちらが用意するから気にせずに食べればいい。昼食は各自の判断で」



大野智と名乗るもうひとりの若い男性は、朗らかな印象の人物だった。

この3人のやり取りを聞いてるとかなり親しいのが伝わってくるけど……俺はやっぱり深く関わるつもりはなかった。



「……櫻井翔です。お世話になります」



軽く頭を下げて挨拶すると、管理人さんが他にも説明することがあるって建物内を案内してくれた。