(潤)
まぁ がいなくなってからの翔さんは、まるで別人のようだった。
表情も感情も失くした人形のよう。
心を閉ざして誰も寄せ付けない、そんな状態の翔さんを放っておけるはずがない。
まぁ を喪ったあの時の翔さんの、断末魔にも似た悲鳴が、心が引き裂かれたようなあの叫び声がオレの心にも刺さってる。
俺じゃ翔さんの傷を埋められないのも分かってる。分かってるけど翔さんをこのままにしておけないから。
だって俺は……俺だって翔さんの事が……
どれだけ無反応でも翔さんに声をかけ続けたり部屋に押しかけたり、関わりを持とうと必死になってた。
「翔さん……このままじゃ……翔さんが壊れちゃうよ………」
「…………」
「ねぇ…俺じゃ……駄目なの?俺が翔さんのそばに居る」
「潤をそういう目で見られない」
何の感情もこもらない、だけど冷たさだけは感じられる目をした翔さんの一言。
どれだけ翔さんの心の傷が深いのかを、改めて突きつけられた。
学年が2つも違うのはやっぱり大きくて。
急に志望する大学を変えて、ここから遠く離れた大学に行ってしまう翔さんの姿を黙って見てるしか出来なかった。
そんなにも、ここには居たくないの?
思い出も何もかも全てを振り切るみたいに、高校の卒業式と同時に翔さんは姿を消した。