(雅紀)



「ここからはお前も知らない『変身能力者』の話だ。よく聞け、翔」



教授は少しだけ顔をのぞかせる翔さんに笑いかけながら、真っ直ぐに俺を見た。



「変身をする者。その中には『短命』を起こす種と起こさない種がいる。起こさない種は、変身によって消費されるエネルギー量を上回るエネルギーを保有している、もしくは消費するエネルギーを他で補うことが出来る。いわゆる俺みたいな奴だな」



その言葉に、やっぱり教授も『変身能力者』だったのかって改めて思った。



「そして『短命』を起こしてしまう種。翔は元々起こさない種だった可能性もあるが極度の虐待によって体が痛め付けられてしまったからその危険に晒されてる。変身するからって必ず寿命が短くなる訳じゃないからな」



翔さんと教授がもっと早く知り合えてたら翔さんを助けられたのかな……翔さんの悲しい過去が今の翔さんを苦しめてるんだね?



「『短命』の事以外にも説明しておきたい事がある。変身をする者には『ツガイ』ってのが重要……いや、必要になってくるんだ」
「『ツガイ』?」



突然話題が変わって驚くと同時に、初めて聞く言葉だけど俺は何故か胸が騒いだ。



「生きとし生けるものは本能的に『ツガイ』を求めようとする。それは『生殖のツガイ』であったり、それよりも深い意味を持つ『魂のツガイ』であったりする。変身をする者が最も必要とするのが『魂のツガイ』だ」
「『魂のツガイ』?」
「それは変身をする者にとって不安定な状態を落ち着かせる存在であり、かけがえのない存在だ」



教授は静かにそう言うと、しゃがみこんで翔さんに視線を合わせた。



「変身をする者は本能的に『魂のツガイ』を嗅ぎ分ける。たとえそれがまだそれと知らない幼い頃でもな」
「……グゥ…?」



頭だけ見せてる翔さんは教授の言葉にキョトンとしてる様にも見える。だけど教授はそんな翔さんに笑いかけて続けた。



「『魂のツガイ』は魂が求める唯一。『繁殖のツガイ』とは違う。つまり年齢や性別なんか関係無い『絶対的存在』……分かるか?」
「……ゥワウ?」
「俺にとっては まぁこ。まぁこは変身しないが俺が魂を捧げるほど愛してる。つまり『魂のツガイ』は、翔が何よりも大切に想う唯一無二の相手……だよ」
「グゥ ?!」



教授の言葉に、頭だけ見せてた翔さんが勢いよく飛び出してきてしゃがんでる教授に体当たりするみたいに突進した。



………え?翔さんが大切に想ってる相手?