(翔)



気が付けばリョウはいつの間にか大学の教授として働いてて、それもかなり優秀で引く手あまたの『ケモノ学』の権威って呼ばれてた。



「化けるのは得意なんだよ(笑)」



リョウが先生ってマジで似合わないって俺が茶化したら悪戯な顔で笑って切り返してくるのがいつものリョウ。大学では澄ました顔で授業をしててまるで別人。

少々紛れ込んでもバレないからってリョウがたまに俺を大学に連れてくから、俺も面白がってリョウの講義を受けたりしてた。



そこで…あの懐かしいニオイがしたんだ。



すぐには分からなかった。

昔のことだし、お互いにあの頃より成長して見た目は変わってた。

でも……俺は人より嗅覚が優れてるから、何より俺にとって忘れられない大切な想い出だからこそ忘れることなんかあり得ないそのニオイに反応した。



「………雅紀?」



リョウには内緒で大学の書類を盗み見して名前を確かめたら『相葉雅紀』って書いてあったから確信した。

あれは絶対に雅紀だって。

それからはこっそり隠れるように様子をうかがって、すぐに駆け寄りたい気持ちを抑えて、ずっと雅紀を見てたんだ。

あの頃より少し大人になったけど、やっぱり変わらない雅紀のあの笑顔を。

だから妙な奴が雅紀を変な目で見てるって事には、すぐ気付いた。そしてそいつからは隠しようのない『ケモノ』の臭いがするって。



「リョウ、大学に変な奴がいる。アイツは駄目だと思う……多分『ケモノ』だ」
「そうだな……本人は隠してるつもりらしいが俺等は誤魔化せない」
「……気付いてたのかよ。ならさっさと何とかしろよ」



雅紀を危険な目に合わせたくなくてそう文句言ったら、リョウがニヤニヤして俺を捕まえてきた。