(雅紀)



しっかりチョコを堪能した俺は、教授の家に長居するのも悪いから そろそろ帰ろうかなって自分の荷物がある部屋に戻ろうとした。

教授にはひとりで大丈夫ですって言って歩きだしたのに、めちゃ迷って何故か庭に出てしまった。

慌てて引き返そうとしたんだけど、でもちょっと庭にある大きな木が気になってそのまま木のところまで歩いた。

すると、木の上から声が聞こえた。



「………リョウと話してたんじゃないの?」
「え"?あ…翔さん?」



見上げると器用に枝と枝の間で寝てる翔さんの姿があった。



「あの、話は終わったんだけど部屋に戻ろうとしたら迷って……」
「案内する」



俺が迷子になったと素直に言ったらヒョイって木の上から飛び降りた翔さんが目の前に立ってた。

そういえば昨日も翔さんは木の上から飛び降りて俺を助けてくれた……

翔さんって身軽だなって思いつつ、木登り好きなの?って聞くのもおかしいかなって色々考えてたら、翔さんはもう歩きだしてたから慌てて追いかけた。



「あの、ありがとうござい……」
「……別に敬語じゃなくていい」
「へ?あ、でも……」



俺がお礼を言おうとすると、翔さんは俺の言葉を遮ってそう言った。

ちょっとぶっきらぼうだけど翔さんはスゴく親切にしてくれるから、いきなりタメ語にするのも悪いしなんて思うんだけど……なんて考えて翔さんの背中を見つつ歩いてたら不意に翔さんの背中に何かがダブって。




…………やっぱり俺、何か忘れてる?