(……side反転)
妖しいほどの微笑みを浮かべて俺を見るアイツは、その表情を崩すことなく銃を構えたままじりじりと俺に向かって近寄ってきた。
俺が声を発しようとする瞬間に俺の体ギリギリに弾が掠めるから、言葉も動きも封じられてなすすべがない。
「いいねぇ……それだよ…うさぎちゃん」
恍惚とした表情で俺に向けるアイツの言葉に苛立ちしか感じない。
このままアイツの思い通りになんかしてやるもんか!
俺から銃を撃ち落とすのに1発、俺の動きを封じるのに放たれた弾の数は4発、今のところ合わせて5発……いちかばちか弾切れを狙って動いて、弾を切らしたその隙に……
そんな考えで再び声を発しようとしたら、思惑通りアイツが撃ってきた。
これで6発……
「もっと……俺を楽しませてくれるんだろ?うさぎちゃん」
「……お断りだ!」
アイツが俺に致命傷を与えないって保証はないけど、少しでも接近した状態であればもし弾が残ってても避けられるかもしれない。
そんなに甘くないのは承知の上で俺はアイツのすぐ横をすり抜けるつもりで走った。
「駄目だよ、うさぎちゃん……お楽しみはこれからだ」
「ウッ……」
アイツの横をすり抜ける寸前、ちゃんとアイツの銃を持つ手とは逆側へと走ったのに……
あっけなく、俺はアイツに捕らえられた。