ここは、CAFE クレッセント。そして同時に緋色達の専用保育園(笑)

子供達がキャッキャと楽しそうにする側で、大人達が井戸端会議をしています。



「あれ?萌葱くん くまさん持ってたっけ?」



和也に抱っこされた萌葱が、ニッコニコでくまのぬいぐるみを抱えているのを見て、雅紀がそう言いました。



「コレ、もう少しで万引きするところだったんですよ……汗
「へ?何で?」
「スーパーで買い物してたんですけどね、いつの間にか萌葱が持ってて……危うくそのままレジを出るところでしたよ」



和也は、苦笑して萌葱とぬいぐるみに視線を向けました。



「ホント、赤ん坊舐めちゃダメですよ(笑)いつの間にか、すれ違いざまに棚の商品に手を伸ばして取るんですから。これまでも気が付いたらスルメや焼海苔を持ってた事があって、今回はぬいぐるみだったんです」
「焼き海苔やスルメって、萌葱くん渋いチョイスするね汗
「それはおーのさんがツマミを選んでた時なんで」



和也と雅紀の会話を、萌葱はピョコピョコ体を弾ませてぬいぐるみをフリフリして聞いています。



「もしかしたら萌葱もみんなと同じ様にぬいぐるみが欲しかったのかもと思って買ったんです」
「なんとなく翡翠達が持ってるのと似てる感じするね……でも、ピアス付けててカッコいいじゃん」




茶色の毛並みで深い蒼色の目をした くまのぬいぐるみ。耳の部分にピアスみたいな飾りがあって、それには『 kai  』と刻印してあります。

クスクス笑って和也と萌葱を見ていた雅紀でしたが、ふと何かを思い出したのか潤に向き直り声をかけました。



「そういえば、今日って翔くん具合が悪いからって雅紀くんが預けに来てたよね?」
「それな……翔のやつ、変な奴に襲われかけたらしい」
「まじっ !? どこのどいつか知らないけど…許せんむかっ
「俺も直接翔からは聞いてないんだけど、雅紀から聞いたのは、通りすがりの人が助けてくれたらしい」



潤の話を聞いて雅紀が怒りをあらわにし、和也も顔をしかめています。

ご機嫌だった萌葱がぴたっと動きを止め、じいっとぬいぐるみに視線を向けてたのは、大人達には気付かれていませんでした……









『何で甲斐様がここにっ ?! 』
『萌葱さまが琥珀さまの行動把握の為に甲斐様を呼びつけたそうです汗
「かい、しょーちゃ たすけたの。ひいくん だーんどーん ふわんなの」
(訳しますと、甲斐が翔を助けた。緋色が壁に叩き付けられるの防いだ、です)
『わたくしが助けを求めた声を、甲斐様が聞いて下さいまして……間一髪でしたよ』
『我々は遠く離れていても、互いに会話出来ますからね……』



大人達の聞こえていない、天使達とそのお供の会話。

そう。萌葱にもお付きのベアが。

萌葱のベアの名前は甲斐 ( カイ )。

緋色達のベアとは少し違う、何か事情がありそうです。



『本来ならば、もう萌葱さまのお側を離れた立場の甲斐様がお戻りにはならないはずなのですが汗
『私だけで琥珀さまと萌葱さまに付き添うのは無理ですから……私は琥珀さま付きですし』
『くま太どのが琥珀さまと共にあるゆえ、琥珀さまの その身に何か起これば くま太どの経由で伝わりますからね……。今回はくま丸どの経由で緋色さまの危機に駆け付けて下さったと』



萌葱は、赤ん坊の姿をしていても色々と手を回している模様です(笑)





…………さて、この先どうなるのか。

それは天使のみぞ知る天使