慌ただしく謹慎の終了となった翔は、そのまま自分のマンションに戻る事となり、次の休みの日まで雅紀とは電話やLINEでしかやり取り出来なかった。

ようやく迎えた休日の前日。

翔は仕事が終わるとそのまま雅紀の家へと車を走らせた。



「お帰りなさい、翔さん」

「ただいま雅紀………」



激動とも言える状況の変化を、雅紀の顔を見た途端に改めて思い出した翔は、出迎えてくれた雅紀を腕の中に閉じ込めてしみじみと噛み締めていた。



「電話では聞いたけど……改めて教えて?大野さんと二宮さんの話」

「うん……あのね…………」



智が有名な画家であった事。和也が有名な作家であった事。そして2人が潤に対して……松本ホールディングに対して行った行動。

それらは翔の知らなかった部分の智と和也の姿であり、2人が雅紀の事を大切にしているからこその行動であったと。




「………別件の反撃って…………これの事だったのか……」

「別件?」

「ん、実はさ………」



あえて雅紀にヘッドハンティングの話をしていなかった翔は、改めて自身に起きていた事柄を話し始めた。



「………正式な処分が出たから出社しろって言われたあの日にさ?ヘッドハンティングされたんだ。ブルーウェーブホールディングって大企業に」

「 !? 」

「俺のいる会社とブルーウェーブホールディングが業務提携して……恐らくそれによって松本さんの会社はダメージを受けてるはずなんだ。それでその話の時に雅紀を傷付けた事に対する反撃は別件でも行われてるって言われて……」



ようやくあの時の言葉の意味が理解出来た翔は思い出した様に背筋が寒くなった。

広域的にダメージを与えていたと。まさか潤だけでなく潤の父親の会社、松本ホールディングにもダメージを与えていたとは。



「世の中には……絶対敵に回しちゃいけない人が居るんだな。何処がどう繋がってるのか分からないって事か………」



ブルーウェーブホールディングのCOOが言っていたのは、ここに繋がるのかと。



「……ギャラリー 青波。そこってブルーウェーブの関連なんじゃないか?」

「え?でも……」

「そこから繋がってるとしか思えないんだ。いきなりウチの会社に業務提携の話が出て俺にヘッドハンティングの話が来て……」



翔は、あの時の会話を思い出していた。



『全てを自由に出来ると勘違いした輩が好き勝手するのはよくある事』

あくまでも……私の行動は私と秘書が独断で行ったもの



目に見えない何かが今回の騒動では働いていたのではないかと。

翔はそんな気になっていた。