夏の間には、私たちでも生きものを殺すことが一番多い。魚を釣ってきて、生きたまま料理する人だっているだろう。なめくじに塩をかけて殺すことだってある。



ところが学者によると、もがいたり、引っくり返るのは、断末魔の苦しみのせいではないという。体の運動能力が急に衰えてきたので、なんとかそれを正常に戻そうとする身体運動、つまり体操に似ているらしい。



痛みなんか、これっぽっちもないのだという。



私たちの中にも「あいつはオーバーだ」という人間がいる。大して痛くもないのに、いかにも激痛のように、「イテテテッ」と、顔をしかめる。



今回のオリンピックのハイライトであった女子オリンピックでは、土佐礼子選手の激痛にゆがむ顔が、終始映像として送られてきた。



彼女は本当に脚の痛みに耐えかねたのだろうが、一面、あそこまで苦痛にゆがむ顔を見せないと、途中棄権できなかったのかもしれない。



それほど、期待を負わされた人間の立場はきびしい。土佐選手のゆがんだ顔には、「もう許してください」という謝罪が込められているように思ったのは、私だけだろうか?


殺される魚や虫の表情はわからないが、一見するともがき苦しんでいるように思われる。魚を釣るときも、みみずに針をつけるが、魚の餌となるみみずは、七転八倒したあげくに魚に食べられるのだから、私たちは残酷かもしれない。