前回の話はコチラ↑
徒歩1分の場所にあるコンビニで酒を買い込み、夕方5時には既に缶ビール(500ml)3本を空けていたオレ。
他には小瓶の冷酒3本を用意していたのだが、長旅の疲れもあってか、2本目のビールを空けたところでホロ酔い気分になっていた。
うん、これなら多少の災難くらいなら話のネタとして割り切れそうだ。
ライハの横には宿主夫婦の住まいらしきバラックが。オレなら虫眼鏡で全焼させる自信がある。
「おっ、もうやっちょったんかぇ?一応、ウェルカムドリンクで生ビールがあるけど」
「あ~…い、いや、もう結構呑んじゃったんで気持ちだけ頂いときます」
嫌がらせの様なトイレに行った時、その横にあった厨房に放置されたビアジョッキを見てしまったオレ。
【見ぬもの清し】という諺を知ったのは十代の頃だが正にそれだ。もう使い捨ての紙コップしか使う気になれない。
二階のドミトリーも見せてもらったが、いつ使用したか分からない布団が敷きっぱなしで放置されてた。
来年辺りには片付いているだろう。
「あの~……さっきは貸切りって言うたんやけどな、急遽二人泊まる事になったんやわ」
「え……じゃあ、あの……オレは別の部屋に移りましょうか?」
「いやいや、二階にも部屋はあるんやけどな、夏場は熱が籠るけん暑くて寝られんのじゃわ。エアコンのある部屋の方がいいじゃろ?」
廃墟・汚部屋・汚布団・汚便所の後は、グリーストラップ化したシンクに突っ込んだままの食器類・グラスを見せ付けられ、更にはあの拷問部屋で相部屋か。
しかもその二人は夫婦らしいのだが、何が悲しくて他人夫婦と川の字で寝なければならないのか?
つーかコロナ禍の真っ只中なんですけど、今。
謎は深まるばかりだ。
逃げ出そうにも、今運転すれば酒気帯びだ。
やはり残りの選択肢は気絶しか無いのか……
利用者にとっては思い出の1ページだったかもしれんが、現実とは得てしてこんなもんだ。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!
田んぼの向こうから重く騒がしい排気音が近づいてきて、迷惑としか言い様のないその音は廃屋ハウスの前でピタリと止まった。
オレがこの地域の住人なら打ち首獄門にして晒し首にしてやるところだが、聞く人が聞けば堪らないサウンドなのだろう。
その良さが騒音嫌いのオレにはさっぱり解らんが、いずれはガソリン車廃止と共に消えて行く遺物だ。
今みたいに迷惑な排気音は無くなり、替わりにオルゴール音の童謡メロディが義務づけられる事を強く望む。
「おっちゃーん!バイクどこに停めたらいい?」
急遽泊まる事になった二人は熟年夫婦と聞いていたが、廃材宿のドアを開けて入って来たのは30前後の姉ちゃんだった。
それにしても超常連か親戚なのか?この馴れ馴れしさは。
どう見ても宿主とは40歳くらい離れてる様に見えるんだが……
「横に屋根付きの所があるけん、そこに入れて」
あぁ……
更に激しさを増すのか、この生き地獄は……