前回の話はコチラ↑
「ハイハイ、大丈夫ですよ。で、あの~、○○クンさぁ、○○クンはバイクで来るの?」
当初の予定では、志摩のライハは別の場所を予約するつもりだった。
クチコミなんかを見る限りだと良さげではあったのだが、その宿は和歌山の地獄宿と繋がっている様なのだ。
冗談ではない。
そうと分かれば別のライハをと連絡したのが冒頭の電話なのだが、何でライハの経営者というのは見えない相手に対して【クン付け】したりするのだろう?
オレには到底理解出来ないんですけど、その感覚。
「あれっ?…え~っと……」
「あ、すみません。今日予約した者なんですが……ちょっと早かったですかね?」
電話で話したオーナーの奥さんらしい。
歳はオレと同じか、ちょっと下くらいに見える。
「あ~、やっぱり。いや、お父さんから、『若い兄ちゃんが一人で来るし、安ぅしといてやってくれ』って言うてたんやけどね、思ったより年配やったから」
またか………
幾つに見られ様が思われ様が全然構わないが、ライハっつーのはどこでもまず見た目や年齢について話すのか?
こう言っちゃ何だが、オレみたいな底辺店主だって【ある程度会話をしてから】そういう話をするし、『ちょっとこの人に年齢ネタは向いてねーな』と思ったら止めとくもんだ。
つーか、百歩譲ったとしても初対面の相手、しかも客に対してそのタメ口はどう考えてもおかしいだろ?
マジでノータリンばっかりなのか?ライハの経営者っつーのは。
部屋は全て個室。それは大変有難いのだが、この旅の趣旨には1㎜も沿わない。
「値段の事とか、お父さんから聞いてる?」
「あ、いや……ホームページを見て予約しただけなんで、そこに書いてある値段しか知りませんけど」
「あ~……ウチねぇ、今はライダーハウスやってないんやわ。そやし、普通なら一泊六千円なんよ~。今はペンションやから」
アンタらがライハをやろうがペンションをやろうが漬物屋をやろうが一向に構わない。
そんな事は無職のガキがパチプロを名乗るのと同じで肩書きなんか好きにしたらいいのだが、それなら何故ホームページにそう書かない?
ラーメン屋と思って入ってみたら、『ごめんね、今は伊勢海老の造りしか出してないんやわ』って言われても困るだろ?普通は。
「ホームページねぇ……あれを作ってくれた人が亡くなってしもて……」
「そうですか、分かりました。ちょっと他を当たってみます」
「他を当たるって言うても、ここら辺はどこも高いよ?大体六千円はするし…」
「いや、金の事は別にどうでもいいんですよ。どっかビジホでも探します。どうもお騒がせしました」
『六千円!?いや、それはちょっと…』とでも言うと思ったのだろうか?
オレ、一応50代なんですけど。
「じゃあもう2500円でいーわ、せっかくホームページ見て来てくれたんやし」
「え?………いいんですか?それで」
「うん、いい。その代わり、今日のバーベキューの準備を手伝ってくれたらやけど」
一体何の話かさっぱり解らんが、六千円が二千五百円になるならそれでいい(←プライドどこ行った?)。
(へぇ~…このオレに素人崩れがバーベキューの支度をせえってか……面白ぇ♪)
「それで良かったら、『バイト部屋』って呼ばれてる部屋に泊まって」
「バイト部屋?」
「そう、○○クンが立ってる真後ろの部屋」
「全然構わないですよ。で、何をしたらいいんですか?」
「私、今ちょっとお腹手術して重い物持てないんで~。炭とか運んでもらったり、後はバーベキューの仕込みとか♪出来る?」
「お安い御用です」
長期滞在するガキがお手伝いする代わりに泊まる事があるらしい。
「え……因みに職業は何?」
「一応は調理師です」
「あ……あ~~………」
「じゃあ、荷物を置いたら早速始めましょか。シャワーだけ先に浴びさせて下さい」
久々にウズウズした。