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「尾鷲の中心かな?よーし、ここで昼飯にすっか♪」




まだ昼には早いっちゃあ早いのだが、早朝6時に中華そば一杯食ったきりなのだ。そりゃ腹も減るわな。





(尾鷲っていうたら何や?名物は。ん~と………あった!『鰹の生節』……う~ん、何かそそられへんな……あ、『クキ漬け』って何や?……大根の葉っぱを付けた物……か……よっしゃ!弁当にしよ♪)





三重ではよく見掛けた【主婦の店】というスーパーマーケット。
店名からしてオレ向きだな、潜入開始。





(ん~……何かショボイな。主婦の店を名乗るなら、何かもうちょっと生鮮の品揃えを頑張ってほしいな。ま、そんだけ料理を作らん主婦が増えたって事なんやろうけど…)




何か面白い食材でも無いかなと期待していたが、まあ至って普通のそこら辺にあるスーパーだな。『これぞ尾鷲!』という物は皆無だわ。
いや、オレが知らないだけかもしれんが。





「あのー、ちょっとお聞きしたいんですが」

「ハイ、何でしょ?」



卵の前でモアイ像の如く固まっているパートのおばちゃん。
不自然に膨らんだ髪はおそらくエクステなんだろうが、まさかそれで目の前のウズラ卵を孵化させるつもりじゃあるまいな?
どうでもいいけど往年の林家三平みたいになっとるぞ、アンタの頭。




「あ、え~っと、尾鷲の名物料理って言ったら何が有名なんですかね?」

「名物ですか?う~ん……やっぱり【てこね寿司】か【サンマ寿司】ですかねぇ?一般的には」


「てこね寿司…ですか?つまりこう……手まり寿司みたいな?」

「いえ、赤身の魚を漬け込んだのをね、酢飯の上に乗せて…」

「あー、漬け丼みたいなモンですか」

「そうそう」

「サンマ寿司は?」

「サンマ寿司は押し寿司ですよ。バッテラみたいな感じ」

「あぁ……なるほど、ありがとうございました」



漬け丼風にバッテラ風……どちらもすぐ頭に浮かぶし嫌いではないのだが、オレの中に棲む子供舌ジュンがピコピコハンマーで叩き割って行く。イヤイヤ期なのか、オレは?







誰か矯正してくれ、この習慣を。






「うん、美味い♪」




尾鷲港という名称であっていると思うが、そこのバス停と公衆電話がある場所辺りで【オムライス&牛乳】という園児セットを満喫するオレ(←50代)。
近くにいた漁師二人が怪訝そうな表情でコッチを見ていたが気持ちは解る。
立場が逆なら、オレだって消え去れビームを出すだろう。






どうやら近々祭りがあるみたいだな。
白フン姿の漁師嫁が、鯨のオブジェに銛をブッ刺すクライマックスなら参加したい。






「イチ・ニー・サンシ、イチ・ニー・サンシ♪」





どこからともなく聞こえて来るピンク色の声。
時折笑い声と歓声が入り交じったチアリーディングボイスに吸い寄せられて行くと、急坂の角にある集会所みたいな建物があった。






どうやら祭りの練習中だった様だ。
頼むからオレも参加させてくれ、肩車要員で。





覗きたいが覗けない。入りたいが入れない。
一昔前なら、『おー!やっちょるねえ♪ネクター持っち来たけん、皆で飲みよなー!』とか言いつつ牝馬の匂いを嗅ぐのだろうが、今それをやったら10分後には交番行きだ。それは困る。




(あ~あ、これが今人気のアイドルとかやったらサプライズで済まされるんやろうけどなぁ……)




女子大に突然現れた福山みたいな場面を想像しながら舌打ちするオレ。
いや、もしかしたらオレだって湯江健幸くらいの反応なら………ある訳ねーか。アマゾン奥地に暮らす裸族の女村なら分からんが。







「よし、行くか!イッチ・ニー・サンシ♪イッチ・ニー・サンシ♪」






志摩ではいい事あったらいーなー。











集会所近くにあった謎の一画。
簡易手投げ弾でも作っとるのか?ここの住民は。