国民生活を人質にする既成政党 | 桜内文城オフィシャルブログ「みんなきさいや」Powered by Ameba

国民生活を人質にする既成政党

10月30日、野田内閣は11月分の「地方交付税交付金の支出凍結」を発表した。

そもそも政府民主党は、参議院で野党が多数を占める「ねじれ国会」では特例公債法案の成立の見込みがないとして、前国会でもお盆を過ぎた会期末間際に参議院に送付、そのまま廃案となった。予算関連の重要法案である以上、本来、前年度内に予算案とともに衆議院で可決の上、参議院に送付すべきものだった。参議院で多数を占める野党に責任を押し付けるつもりだったと推察されるが、あまりに姑息な国会運営という他はない。

その後、解散先送りを狙う政府民主党は、10月29日、例年よりも1ヶ月以上遅れてようやく臨時国会を開会した。年内解散を強く求める自民党の安倍総裁に対し、野田首相は特例公債法案の成立に協力しなければ解散しないという暗黙の条件を提示した。その際、飛び出したのが冒頭の「地方交付税交付金の支出凍結」である。

地方交付税交付金の支出凍結がなされるとどうなるか。地方公共団体の様々な支出に影響が及ぶ。臨時職員の給与、公共事業代金の支払はもちろん、場合によっては市民サービスにも直接の影響が考えられる。影響が広範なだけに、地方公共団体の首長や一般国民から「早く特例公債法案を通してくれ」という声が上がるのを待っているのだ。

民主党も自民党も、国民生活を人質にとって党利党略に走っている。自民党は「年内解散を約束しなければ、特例公債法案に賛成しない」と言い募り、政府民主党は「野党が特例公債法案に賛成しないから、地方交付税交付金を凍結する」と国民を恫喝する。国民が今、政府に求めているのは解散総選挙ではなく、ましてや永田町のコップの中の嵐に過ぎない党利党略の政局でもない。我が日本維新の会の松野国会議員団代表は、先週の代表質問で「政局には与しない、特例公債法案には賛成する」旨を明言した。

ところで、民主党、自民党、いずれの国会議員もすっかり忘れている重要な事実がある。それは、地方交付税交付金の支出は「交付税及び譲与税配付金特別会計」という特別会計からなされるものであって、仮に特例公債法案が成立せず、一般会計が発行する特例公債(赤字公債)が許されないとしても、特別会計の資金繰りには何ら問題は生じないということである。実際、「交付税及び譲与税配付金特別会計」は過去に資金繰りに窮したとき、最大で53兆円もの借入金残高を抱えていたことがあるぐらいである。要するに、「交付税及び譲与税配付金特別会計」で借入をすれば、そもそも国民生活に影響を与えることは一切ない仕組みになっているのだ。

もちろん、特例公債(赤字公債)は財政法上、原則として禁じられているからこそ、特例法の成立が要件とされているのであり、国会議員は国民生活に悪影響を及ぼさないよう、お互いに議論を尽くし、国の財政運営を円滑に行なっていく責任を負っている。

しかし、国の財政制度に関する無知によって国民生活を人質に取り、党利党略の政局に明け暮れるならば、国民の信頼は早晩失われるだろう。その意味でも、国家経営の意志も能力にも欠ける既成政党の国会議員には速やかに退場を願う他はない。