【再掲】経済復興基金(50-100兆円)の創設 | 桜内文城オフィシャルブログ「みんなきさいや」Powered by Ameba

【再掲】経済復興基金(50-100兆円)の創設

昨年(2010年)2月に当ブログにて「経済復興基金(50-100兆円)の創設について」と題するデフレ脱却のための財政・金融政策の提案を行った。その目的は、①政府債務をこれ以上累増させることなく50-100兆円規模の「未来への投資」を行うことと、②市中に流通するお金の総量(マネーストック)を50-100兆円規模で直接増加させることの2点である。詳しくは下記を参照されたい。

【再掲】「経済復興基金(50-100兆円)の創設について」

昨年2月の段階では経済復興基金による「未来への投資」としてエネルギー関連、研究開発投資等を例示したにとどまるが、今般、その範囲を拡大し、東北関東大震災からの復興に必要なインフラの復旧、電力のボトルネック解消等の「未来への投資」を実施すべきと考える。

今回、経済復興基金の創設を再提案するとともに、2点付言しておきたい。

第一に、ネット上でいわゆる「リフレ派」と呼ばれる人たちの、特にTwitter上の匿名による発言について敢えて取り上げたい。Twitterの制限字数である140字以内で専門家がロジカルにその専門分野について意を尽くして説明することは極めて困難である。大多数の専門家は自らの専門知識が少しでも世の中に貢献することを期待してTwitterでつぶやいているのだと思うが、匿名による重箱の隅を突くような批判、それも仰ぎ見るほどの超「上から目線」で専門家を罵倒している姿は見苦しい。彼らは粘着質なので、本来、Twitter上では自由であるはずのリムーブ、ブロック自体、批判する。

ネット上のリフレ派の典型的な主張は次のようなものである。「日銀のバランスシートを拡大させれば予想インフレ率が上昇し、その結果としてインフレになる」。この主張には理論的な間違いが2点含まれている。

①日銀のバランスシートを拡大してベースマネー(マネタリーベース)を増加させたとしても、伝統的金融政策の枠内(日銀が実施するオペレーションの相手方を金融機関に限定)にある以上、市中に流通するお金の総量(マネーストック)には何ら影響を与えない。これは社会会計の複式簿記によって導かれる命題、法則、恒等式ともいうべき理論的な帰結である。ベースマネーもマネーストックも、日銀や金融機関のバランスシート上の負債の勘定残高から導かれる数値であって、その増減は複式簿記によって計算されるのである。

②ネット上のリフレ派は、日銀のバランスシートを拡大すれば、それによって市中に流通するお金の総量(マネーストック)がまったく増加しなくとも、予想インフレ率が上昇するからインフレになると主張する。では「予想インフレ率」とは何か。端的にいえば、皆が予想する物価上昇率を意味する。予想インフレ率を具体的に測定するため、BEI(Break-Even Inflation rate)という、10年の物価連動債と10年の利付国債の金利差が用いられることが多い。しかし実際には、物価連動債の流動性の薄さやその他のリスクプレミアムの影響は避けられず、正確に予想インフレ率を認識することは極めて困難である。

インフレやデフレの議論を行う際、「予想インフレ率」という概念を用いて説明すること自体は有用だと思う。しかし、正確に認識することもできないそのような概念を政策論に持ち込むことは避けるべきだ。我々は「予想インフレ率」を正確に認識することすらできないのに、これをどうやって政策的にコントロールすることができるのか。

飛行機の乗客が皆で「飛べ!」と祈るから飛行機が空を飛ぶわけではない。科学的に十分に解明されている訳ではないとしても、航空力学などの理論に基づいて飛行機が飛ぶのだと大多数の大人は理解している。「皆で『飛べ!』と祈れば飛行機が飛ぶ」と主張するのはオカルトでしかない。「予想インフレ率」という概念に依拠してリフレ政策を主張するのは、「皆で『インフレになれ!』と祈ればインフレになる」と主張することと変わらない。

第二に、昨日(3月26日)付の日経のある記事を取り上げたい。武藤敏郎氏(元財務次官、日銀副総裁)がインタビューで「復興と財政両立へ基金」と題して「復興基金」の創設を提案している。元財務次官らしく「復興連帯税」の創設まで踏み込んでいることには明確に反対せざるを得ないが、「復興基金」の考え方は、上記「経済復興基金」構想と大半が重なり合っている。

大蔵省の大先輩(当時事務次官)でかつて僕(当時課長補佐)のことなどまったく歯牙にも掛けていなかったと思うが、僕自身、武藤次官の仕事の方向性には反発することが多かった(だから財務省を辞めた)。今回、珍しく意見が一致するところがあったので、その記念に当該記事を貼り付けておきたい。

$桜内文城オフィシャルブログ「みんなきさいや」Powered by Ameba