【国会報告】司法修習生の給費制復活に関する反対討論@参議院本会議 | 桜内文城オフィシャルブログ「みんなきさいや」Powered by Ameba

【国会報告】司法修習生の給費制復活に関する反対討論@参議院本会議

一昨日(11月26日)、参議院本会議では、北朝鮮による韓国・大延坪島砲撃に関する決議案、補正予算3案の他、15本の法案の採決が行われました。その中で、「裁判所法の一部を改正する法律案」は、本年11月1日に施行された旧法により、司法修習生(法曹の卵さんたち)に対する給与の支給制度が資金の貸与制度に改められたものを、再度、給与の支給制度に戻すという法案です。


日弁連は「経済的事情によって法曹を志すことを断念せざるを得ない」状況をなくすためと称して、相当強烈なロビイング活動を展開していました。旧法の施行が本年11月1日からでしたので、その日を過ぎて以降、この話は収まったかに見えましたが、日弁連の再三にわたる強烈なロビイングの結果、11月下旬になって民主、自民、公明の幹事長・国対委員長会談で急遽、議員立法として提案されることとなった法案です。


みんなの党は、そのような日弁連の理不尽な圧力に屈するような、そして国民不在の党利党略に基づく法案には反対することとしました。圧倒的な数の力でこのような法案が可決成立するのを座して見過ごすわけにはいかない!ということで、参議院法務委員会の理事を務めている僕が本会議での反対討論に登壇することとなりました。


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私は、みんなの党を代表して、裁判所法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。


反対の第一の理由は、今、司法修習生に対して国が資金を貸与する制度を停止し、国から給与を支給する制度に戻す実質的かつ合理的な理由がないことにあります。


発議者である衆議院法務委員長は、本法律改正案の実現のために執拗な政治的介入を続けた日弁連の主張を引用し、「経済的理由により法曹を志すことを断念せざるを得ない」という状況をなくすため、給費制への復活を主張しています。しかし、法曹志望者の減少の原因は、むしろロースクールにおける教育の在り方、その就学期間中の経済的負担、そして三回不合格になると司法試験の受験資格を失うという、いわゆる「三振」制度等にあると考えられます。


法務委員会の理事を務めている私の許には、厳しい経済環境の中で一生懸命法律の勉強をしている若い方々からのメールが舞い込みます。彼らは若い時期の2年または3年間、いわば人生を賭けて法曹への夢を実現しようともがいています。しかし今のロースクールにかかる経済的負担、そしていわゆる「三振」制度によって夢を絶たれるリスクの大きさに押し潰されてしまう者も多いのが現実です。仮に給費制を復活したからといって、決して法曹志望者が増加するような状況ではないという現実を我々国会議員は知るべきです。


確かに給費制から貸与制への移行によって、司法修習生の経済的負担がいくらか増加することは否めません。しかし、先ほども述べたとおり、現実には法曹志望者の経済的負担の大半はロースクールの就学期間中に生じています。給費制維持のための約100億円の税金投入は、ロースクールで学びながらも残念ながら司法修習生となれず、多額の負債だけを抱えた者からも、税金という形で勝ち組ともいえる司法修習生に対して経済的支援を強要することにもなります。これを正当化し、無理矢理にでも給費制を復活させる合理的な理由は見当たりません。


反対の第二の理由は、仮に同じ100億円の税金投入を行うとすれば、給費制の復活だけを求めるのではなく、国会において他の選択肢をしっかりと議論すべきだったということ、すなわち議論が尽くされていないことにあります。


そもそも戦後長く続いた司法修習生の給費制を貸与制に改めるという現行法への移行には、当時は野党であった民主党も賛成しています。その後、本年11月1日から既に施行されている本法律について、ここに至って突然、衆議院の委員長提案により、衆議院では一切の質疑もないまま、改正案が参議院に送付されてまいりました。事ここに至るまで民主・自民両党でも異論が多かった本案について、ほとんど何の議論もなく、突然、本案を成立させようとするのは、国会対策上の政治的配慮、国民不在の党利党略に基づくものと非難せざるを得ません。


本来であれば、貸与制を補完する他の選択肢として、例えば、①弁護士過疎地域での勤務や、国選弁護活動に従事する弁護士について貸与金の返還免除を認める、あるいは②これほどまでに理屈のないものをゴリ押しする日弁連自身が優秀な後進育成のために返還不要な奨学金を支給する、あるいは③司法修習生の修習専念義務を緩和し、法律事務所でアルバイトを兼ねた研修等を認めるなどが考えられます。しかし、そのような他の選択肢との比較衡量も、国会での議論も、何もなされていないのが現状です。


以上に鑑みれば、少なくとも国会において将来の法曹養成制度の在り方について徹底的に議論すべきであったと考えます。従って、我々みんなの党としては、裁判所法の一部を改正する法律案にあえて反対致します。


以上を申し上げ、反対の討論を終わります。

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みんなの党を除くすべての会派が賛成する法案でもあり、また当日は仙谷官房長官らに対する問責決議案の審議・採決がその後に予定されていたこともあって、少しでも早く本会議を終えたい他の会派の議員からは結構ヤジを飛ばされました(特に共産党)。ただ、本会議場の演壇に立つと(自分が大声でしゃべっていることもあって)ヤジはほとんど聞こえないものだということにも気付きました。


その日、みんなの党は僕を含め5人が本会議で登壇したこともあり、他の会派からは「みんなの党のせいで帰りが遅くなる」とか「みんなの党は目立ちたがり屋だ」といった皮肉も言われましたが、国会議員である以上、国会でしっかりと自らの意見を主張し、議論を戦わせるのは当然の責務でもあります。


確かに、僕が担当した司法修習生の給費制復活に対する反対討論は、いわば日弁連や法曹関係者を敵に回すことでもありますが、しがらみのない政治、正しいことを正しいと素直に主張できる政治を目指す我々みんなの党からすれば、多数の力に簡単に屈するのではなく、また反対のための反対でもなく、どうしても自らの主張を本会議で明らかにする必要があったのだと思います。


そんなこんなでその日の本会議がようやく終わったのは午前0時50分頃。マスコミの皆さんも「みんなの党がKY(空気が読めない)だからここまでかかったよ」と愚痴をこぼしていました。申し訳ないとも思いつつ、永田町ではKYであっても、国民の目線からすれば、主張すべきを主張することは決してKYではないのでは?とも思った次第です。それはそうと、参議院議員の皆様だけでなく、すべての議会及び各事務所のスタッフの皆様、マスコミの皆様、お疲れ様でした。