入院の荷物の中に入れた本。

もう1冊は

『エンジェル・フライト 国際霊柩送還士』佐々涼子

(2012/11/30発行)

 

異境の地で亡くなった人は一体どうなるのか―。

国境を越えて遺体を故国へ送り届ける仕事が存在する。

どんな姿でもいいから一目だけでも最後に会いたいと願う遺族に寄り添い、

一刻も早く綺麗な遺体を送り届けたいと奔走する“国際霊柩送還士”。

彼らを追い、愛する人を亡くすことの悲しみや、

死のあり方を真正面から見つめる異色の感動作。

第10回開高健ノンフィクション賞受賞作。

 

 

Amazon primeで見たドラマの原作本。

 

 

 

人は死んだらどうやって祖国へと帰るのか。

どんな人がどんな想いで運んでいるのか。

国境を越えた地で亡くなると

家族はどんな想いを抱くのか。

 

外務省の「海外邦人援護統計」によると

1年に約400人~多いときには600人の邦人が

海外で亡くなり、

取材先であるエアハースでは、

毎年約200~250体の遺体を運ぶという。

 

 

 

 

2004年12月26日、スマトラ沖地震

死者22万人、行方不明者77000人

日本人観光客の死者40人、行方不明者2人。

 

 

2011年2月22日

ニュージーランド南島、クライストチャーチ付近

M6.3の地震が発生。

現地では185人が死亡。

このうち、市中心部のカンタベリーテレビビルの倒壊に

巻き込まれた日本人留学生28人が死亡。

 

 

東日本大震災以前にも、世界のあちらこちらで

災害が起きているのに、

まるで他人事だった…。

 

実際に家族を亡くした人以外は、

大抵そうなってしまうのかもしれない。

 

 

 

自然保護のボランティアに行った先で

津波に飲み込まれた妻の帰りを

まだ若い夫と、幼い娘が迎える。

 

 

従業員からとても慕われた親方は

現地の従業員から、きちんとしたスーツに身を包まれて

日本に帰ってきた。

 

 

発展途上国のインフラ整備に携わっていて

転落死した男性の、凄惨で変わり果てた姿。

 

 

そして、シリア紛争を取材していたジャーナリストの死。

 

読みながら、アフガニスタンで糾弾に倒れた

中村哲医師のことを思い出していました。

 

 

 

国際霊柩送還士

彼らはこれまでもずっと遺体を搬送し続けていた。

報道されるような大きな事件、事故には必ず彼らの働きがある。

災害時にも紛争時にも、彼らは海外で亡くなった邦人と

その遺族を助けてきた。

カメラの前を何度も通っているはずなのに

誰も彼らに気を留める者はいない。

なぜなら死を扱う仕事だからだ。

 

海外で遺族を亡くして悲嘆にくれている時に

誰が力になってくれるか…

それは彼らのような人々だ。

そっと人に寄り添い、そっと人の前から消えていく。

いつも忘れ去られる人だ。

 

 

エアハース社長の木村 利惠さん。

ドラマの米倉涼子さんと重なりました。

醸し出される人間味って、

一朝一夕で身につくものではなく

人間何回目?って人は、絶対にいるんでしょうね。

 

 

本の中には「取材者」という章があり

佐々涼子さんご自身のお母様のこと、弟さんのことが書かれてありました。

 

弔い損なうと、人は悔いを残す。

悲しみ抜かなければ、悲嘆はその人を捉えていつまでも放さない。

 

私には実感がある。

悲しみをくぐり抜けた時

亡き人はきっと別の形で戻ってくる。

そばにいて励まし、力を与えてくれる存在になる。

 

 

 

ご遺族がお礼を述べられる言葉に

毎回胸が詰まって、泣いてしまう。

 

その度に、胸に付いている心電図が

病棟の詰所にどんな波形を示しているのか

とても気になりながら、

 

それでも抑えきれず

最後まで読み切りました。