この世界は俺には残酷すぎて。Karte.44 | 嵐-大宮妄想小説-大宮に恋して。

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サクラコ

Karte.44

BL要素含みます




「本当に大丈夫か?救急車呼んだほうがいいんじゃねえか」


その男の瞳から目が離せない。
さっきまで寒気すら感じてた身体が背中に汗が滴るほどに
………………熱を帯びてくる。


細くて繊細な長い睫毛が印象的で、輪郭、鼻筋、顔のバランスが均一でとても男らしいのに
どこか幼さを残した顔立ち

ドアの隙間から吹き込む夜風にサラサラな黒髪が靡いて
そして透き通るほど黒く澄んだ瞳から目が離せない。

同時にさっきから続く首筋の痛みは激痛とまではいかないが
………………チリチリと痛み続ける。


そしてなにより俺はこの男を見て
今まで出逢ってきた人間に対して感じた事の無い感情が芽生えた事に驚き
………………戸惑っていた。



 









この人に俺の全てを
………………捧げたい。


この世に生を享けて
自らが『Ω』属性と知ってこんな衝動に狩られたのは初めてだった。

今にも壊れてしまいそうな程に心臓の高鳴りは収まることなど知らずに
脈はドクドクとまるで音が聞こえてしまいそうに程に激しく打ちつける。

蹲った足先は震えて
そして首に埋め込まれたチップが焼けるほどに
………………熱くて。


和也「ぁ………ぁっ………っ」

その場から逃げ出そうと心に何度も言い聞かせても
その男の瞳から目を逸らそうとしても身体がまったく言うことを効かない。

まるで強力な磁石に引き寄せられる感覚。背中だけでなく俺の額からも じんわりと
………………汗が流れ落ちる



「やっぱり呼んだ方がいいんじゃねえか?おい、ちょっと救急車呼べっ」

その男は店員らしき人に伝え、俺の肩に添えられていたその手が一瞬離れたかと思うと
………………俺の頬に触れた。



和也「くっ………………っ!!」


俺はその瞬間
………………確信した。
 
通常の『Ω』なら自分から『α』属性を見つけるのは困難だが
俺は特殊な『Ω』だからこそ判断できる。


そう、この人は間違いなく









『α』属性。

それもきっと
………通常の『α』では無い。

それは俺に襲ったさっきの経験した事がない程の激痛と触れられたことによってすぐに和らいだ痛み。

研究目的で逢わされた『α』属性、そして自分が探し出した『α』属性とは確実に感じた事のなかった

この感覚と

この症状。


和也「す、すみません、も、もう大丈夫ですので……し………失礼しました」
「あ、おいっ」

俺はやっとの思いで立ち上がり重い身体を引きずるように
街の闇に逃げ出した。




どうしていいか分からなかった。
一生を捧げてもいいと思う相手を自分の手で探すためにここまで生きてきたのに。

実際に出逢うとこんなにも
苦しくて
切なくて


一瞬にしてあんな衝動にかられるなんて。




和也「俺は一体どうしたらいいんだ」

俺はネオンすら届かない路地裏まで逃げ出すと足を止めて鞄から痛み止めのOD錠を取り出し飲んだ。

いつもなら躊躇なく飲む薬も
この首の痛みすら
………………愛おしいと思う自分がいて。

そして喉を通過して溶けていくその錠剤を感じながら
俺は夜空を見上げた。

そんな俺の頬には
一筋の涙が零れ落ちてた。