施設長の若山三千彦が書く犬のエッセイです。
読者の皆さんは既にご存じの通り、6月末、2-2ユニットに、コーギーのココちゃんが入居しました。
ココちゃんは、お爺ちゃん(飼い主であるご入居者様)が先に入居していました。
ワンコのキャパの空きがなかったので(現在2-2ユニットは、介護が必要な老犬がそろっているので、4匹までとしています)、先にご入居者様だけが入居して、ワンコの空きができるのを待っていたんです。
ご入居者様のご状態が、お一人で生活できる限界になっていたので、そのままココちゃんと一緒にご自宅で待っていることはできなかったんですよ。
ご高齢者様が特別養護老人ホームに入居される時は、切羽づまった状況であることが多いんです。
ココちゃんは、息子さんが預かってくれていました。
こうして、先に飼い主のご入居者様がさくらの里山科に入居してしまったため、ココちゃんと別々に暮らすことになりました。
それから3か月。
ココちゃんが入居できたんです。
ココちゃんとお爺ちゃんの再会は、職員達が想像したような、感動的シーンにはなりませんでした。
それまでもずっと一緒にいたかのように、ごく自然に近づき、普通に生活を始めたんです。
こちらのご入居者様は、高齢のため弱っていて、食欲が減っているサンタのことを心配して、
ご飯を手の平から食べさせる係を引き受けるなど、犬が大好きなことには間違いありません。
それなのに、愛犬のココちゃんには、大げさな愛情を示すことなく、普通に、本当に普通に接しています。
むしろサンタの方を心配して、抱きしめたりしています。
ココちゃんとは、一緒にいたり、離れていたり、ごく自然です。
ココちゃんは、お爺ちゃんの足元にいることも多いのですが、あちこち自由に動き回り、お爺ちゃんとは全然離れたところで寝ていることも多いです。
お爺ちゃんも、ココちゃんも、本当に自然体なんです。
特にべたべたすることはないけど、いつも一緒にいる訳でもないけど、気が付けば傍にいる、みたいな。
なんだか、素敵なことだと思いませんか?
少し前まで、愛犬と同伴入居するご高齢者様って、特別なドラマを背負っている人ばかりでした。
チロのお爺ちゃんは、末期がんで余命3ヶ月でした。
ナナ姫のお婆ちゃんは、難病で、歩くのも困難な状態でした。
ベラちゃんとお婆ちゃんは、1年間も遠く離れた地で離ればなれになり、涙の再会を果たしました。
トイプードルのココ君のお婆ちゃんは、認知症が進行して、ココ君のことがわからなくなってしまいました。
ココ君の献身により奇跡的にココ君を思い出すことができたのです。
そのような方々に比べると、ココちゃんとお爺ちゃんには特別なドラマはありません。
普段の様子も、ちっともドラマチックじゃありません。
ごく当たり前に、ごく普通の日常として、ココ君とお爺ちゃんは過ごしています。
素晴らしいことです!
本来、ご高齢者様とペットはこうでなくちゃいけないんです。
ごく普通に、一緒にいられる。
ご高齢者様と愛犬、愛猫が一緒に過ごすのは当たり前のこと。
何のドラマもない。
素晴らしいです。
ココちゃんとお爺ちゃんを見て、少しずつ、そういう時代が近づているような気がしました。