このシリーズは、ペットが活躍する本や映画等をご紹介しようと思って始めたもので、動物愛護・動物保護に関わるドキュメンタリーは対象としないつもりでした。
唯一の例外がかつてご紹介した「犬といのちと」です。
さくらの里山科で伴侶動物福祉を始めようかと考えていた理事長(施設長)にとって、その本を読んだことで背中を押されたものだという、うちのホームにとってメモリアル的な1冊だったので特別にご紹介しました。
その後、「虹の橋」をはじめ、動物愛護の精神も感じられるペットの詩を幾つかご紹介したりしましたが、基本的には動物愛護のドキュメンタリーそのものはご紹介していません。
このシリーズでは、読んで元気になる、見たら心が温かくなる、そういった本や映像をご紹介したいという気持ちは変わりません。
でも、今回、もう一度例外が登場します。
この本を無視する訳にはいかないからです。
もう一つの例外は、ちくやまきよし著、夏緑イラストによる漫画「しっぽの声」です。
この著作者コンビは、あの名作漫画「獣医ドリトル」を描いたコンビです。
「獣医ドリトル」もいつかご紹介すると思いますので、よろしくお願いします。
その名作コンビが手掛けた衝撃的作品が「しっぽの声」です。
現在漫画雑誌「ビッグコミック」で連載中で、まだ1巻が出たばかりです。
その内容は、まさに衝撃的です。
ペットの「闇」の部分をご存じない方は激しいショックを受けると思います。
自分の家の一角に多数の犬をおしこめている悪質な個人ブリーダー。
狭くて劣悪な環境に閉じ込められ、ろくに餌も水も与えられない犬達は、病み、衰え、次々と死んでいきます。
共食いがおきます。
飢えと錯乱で、自分の手を食いちぎってしまった仔犬もいます。
違法に密輸入されたコウモリの死体を食べてしまって狂犬病になってしまう犬もいます。
そこはまさに生き地獄です。
しかし「しっぽの声」は、悲惨なドキュメンタリーであると同時に、素晴らしい物語ですから、ちゃんと「光」があります。
地獄を作っている悪質な個人ブリーダーを強行突破し、その地獄の家に踏み込んだのは、獣医の獅子神太一と、ペットシェルター運営者の天原士狼です。
2人は犬達を助け出します。
その後天原士狼は、不法侵入で警察に捕まってしまいますが…。
前脚を失った黒芝の仔犬は、車イスをつけてもらい、嬉しそうに走り回ります。
この子が助けられたとき、亡くなった母犬を思い出しながら、「お母さん、僕たちの声、やっと届いたよ」と心の中で呟くシーンは、涙なしでは読めません。
心に傷を負い、全ての人に牙をむいていたビーグル犬は、天原と一緒に暮す幼い少女の献身的なケアによって心を開きますが、狂犬病が発病し、殺処分となってしまいます。
その少女が、ビーグル犬をもらってくれる里親さんに当てて書いた手紙を、天原と獅子神は、未来に託す手紙と思い、愛護センターの犬や猫を救う努力を決意します。
この2人の主人公、天原と獅子神が、反発しあいながらも互いを認め合うシーンは、獣医ドリトルの主人公たちを彷彿とさせます。
そのように、最高に魅力的なストーリーでもあります。
これからも悲惨なシーンが数々登場すると思いますが、決して「闇」に負けない「光」が語られる物語だと思います。
今後がとっても楽しみです。
ちなみに、動物愛護活動で有名な女優の杉本彩さんが監修しています。
ぜひ多くの人に読んで頂きたい名作です。
タイトル しっぽの声
小学館コミック
現在第1巻が発売中